○障がいを理由とする差別の解消の推進に関する対応要領

平成28年11月14日

訓令第20号/水道事業訓令第3号/議会訓令第3号/教委訓令第5号/選管訓令第3号/監委訓令第3号/農委訓令第3号/消本訓令第4号/公平委訓令第2号/固評委訓令第2号

(目的)

第1条 この訓令は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)に即して、法第7条に規定する事項に関し、職員(臨時的任用職員及び非常勤職員並びに県費負担教職員を含む。以下同じ。)が適切に対応するために必要な事項を定めることを目的とする。

(不当な差別的取扱いの禁止)

第2条 職員は、その事務又は事業を行うに当たり、障がい(法第2条第1号に規定する障害をいう。以下同じ。)を理由として、障がいのある人(同号に規定する障害者をいう。以下同じ。)以外の者と比べて不当な差別的取扱いをすることにより、障がいのある人の権利利益を侵害してはならない。

(合理的配慮の提供)

第3条 職員は、その事務又は事業を行うに当たり、障がいのある人から現に社会的障壁(法第2条第2号に規定する社会的障壁をいう。以下同じ。)の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がいのある人の権利利益を侵害することとならないよう、当該障がいのある人の性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。

(留意事項)

第4条 職員は、前2条の規定の実施に当たっては、別紙に定める事項に留意するものとする。

(所属長の責務)

第5条 所属長(課長相当職以上の地位にある者をいう。以下同じ。)は、前3条に規定する事項に関し、その所属する職員が適切に対応するために、次に掲げる事項を実施しなければならない。

(1) 日常の執務を通じた指導等により、障がいを理由とする差別の解消に関し、その所属する職員の注意を喚起し、障がいを理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。

(2) 障がいのある人等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。

(3) 合理的配慮の必要性が確認された場合、その所属する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。

2 所属長は、障がいを理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。

(相談体制の整備)

第6条 職員による障がいを理由とする差別に関する障がいのある人、その家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、総務部総務課及び福祉保健部障がい福祉課に相談窓口を置く。

2 相談窓口で相談等を受けるときは、対面のほか、手紙、電話、ファクシミリ、メール等、障がいのある人の性別、年齢、状態等に配慮した手段を提示し、対応するものとする。

3 相談窓口で相談等を受けたときは、相談者から収集した情報の事実確認を行った上で、必要に応じ、速やかに是正措置及び再発防止対策を講じるものとする。

4 相談窓口に寄せられた相談等は、相談等をした人のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図り、以後の相談等において活用するものとする。

5 相談等を受けた職員は、相談等をした人から聴取した秘密を漏らしてはならず、かつ、是正措置及び再発防止対策以外の目的に利用してはならない。

(研修・啓発)

第7条 総務部長及び福祉保健部長は、障がいを理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、協同して、必要な研修・啓発を行うものとする。

この訓令は、平成28年11月14日から施行する。

別紙

第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方

法は、障がいのある人に対して、正当な理由なく、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否すること又は提供に当たって場所・時間帯などを制限すること、障がいのある人以外の人に対しては付さない条件を付けることなどにより、障がいのある人の権利利益を侵害することを禁止している。

ただし、障がいのある人の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。

したがって、障がいのある人をそれ以外の人と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障がいのある人に対する合理的配慮の提供による障がいのある人以外の人との異なる取扱い又は合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障がいのある人に障がいの状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。

このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障がいのある人を、問題となる事務又は事業について本質的に関係する諸事情が同じ障がいのある人以外の人より不利に扱うことである点に留意する必要がある。

第2 正当な理由の判断の視点

正当な理由に相当するのは、障がいのある人に対して、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。

正当な理由に相当するか否かについては、個別の事案ごとに、障がいのある人及び第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)並びに事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。

職員は、正当な理由があると判断した場合には、障がいのある人にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましい。

第3 不当な差別的取扱いの具体例

不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。

なお、第2で示したとおり、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。

また、以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらに、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。

(不当な差別的取扱いに当たり得る具体例)

○ 障がいがあることを理由に窓口対応を拒否する。

○ 障がいがあることを理由に対応の順序を後回しにする。

○ 障がいがあることを理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。

○ 障がいがあることを理由に説明会、シンポジウム、研修会等への出席を拒む。

○ 障がいがあることを理由に施設への入室を拒否したり、条件を付ける。

○ 事務又は事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障がいがあることを理由に、来庁の際に付添者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付添者の同行を拒んだりする。

第4 合理的配慮の基本的な考え方

1 障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号。以下「権利条約」という。)第2条において、「「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義されている。

法は、権利条約におけるこの定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、障がいのある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がいのある人の権利利益を侵害することとならないよう、当該障がいのある人の性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を行うことを求めている。

合理的配慮は、障がいのある人が受ける制限は、障がいのみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障がいのある人の権利利益を侵害することとならないよう、障がいのある人が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。

また、合理的配慮は、事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障がいのある人以外の人との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること及び事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。

2 合理的配慮は、障がいの特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、障がいのある人が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。

さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。

合理的配慮の提供に当たっては、障がいのある人の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。

なお、合理的配慮を必要とする障がいのある人が多数見込まれる場合、障がいのある人との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。

3 意思の表明は、具体的場面において、障がいのある人から、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障がいのある人が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。

また、障がいのある人からの意思の表明のみでなく、知的障がいや精神障がい(発達障がいを含む。)等により本人の意思の表明が困難な場合には、障がいのある人の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。

なお、意思の表明が困難な障がいのある人が、家族、介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障がいのある人が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障がいのある人に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働き掛けるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。

4 合理的配慮は、障がいのある人等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障がいのある人に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。

したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。

また、障がいの状態等が変化することもあるため、特に、障がいのある人との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。

5 市がその事務又は事業の一環として実施する業務を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障がいのある人が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、この訓令を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましい。

第5 過重な負担の基本的な考え方

過重な負担については、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。

職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障がいのある人にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましい。

○ 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容及び機能を損なうか否か)

○ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約及び人的・体制上の制約)

○ 費用・負担の程度

第6 合理的配慮の具体例

第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。

なお、記載した具体例については、第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。

(合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮及び意思疎通の配慮の具体例)

(1) 身体障がいのある人(車椅子利用者、内部障がいにより疲れやすい人等)

○ 段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をしたり、携帯スロープを渡したりする。

○ 高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。

○ 目的の場所までの案内の際に、障がいのある人の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障がいのある人の希望を聞いたりする。

○ 障がいの特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。

○ 研修会等を開催する場合には、可能な限り移動と受講・閲覧がしやすい席を案内する。

○ 障がいにより疲労を感じやすい人から休憩の申出があった際に、別室を確保したり、臨時の休憩スペースを設けたりする。

○ 障がいによる不随意運動等により書類等を押さえることが難しい人に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。

○ 事務所等が2階にある等、障がいのある人が窓口に行くことが困難な場合は、職員が1階で受付対応をしたり、事務所等への移動の補助をする。

○ 庁舎内に多目的トイレ等が設置されている場合は、必要に応じて案内する。

(2) 視覚・聴覚に障がいのある人等

○ 必要な場合は、筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字、手書き文字(てのひらに文字を書いて伝える方法)などのコミュニケーション手段を用いる。

○ 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際には、各々の媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用する。

○ 印刷物に複数の色を使う場合は、色覚障がいのある人が色を見分けやすいよう配慮する。(見分けやすい配色:紺と黄、白と緑など 見分けにくい配色:赤と緑、白と黄など)

○ 視覚障がいのある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。

○ 聴覚障がいのある人に説明をするときは、口が見えるようにして話し、視覚的な補助を行ったり、並行して動作を取り入れる。

○ 問合せの連絡先として、電話番号に加え、ファクシミリ番号やメールアドレスも記載する。

○ 案内の際は、「あちら、こちら」などの指示語を使わず、「30センチ右」、「時計で3時の方向」など具体的に説明する。

(3) その他知的障がい・精神障がい等によりコミュニケーションに支障がある人

○ 障がいにより意思疎通が不得意な人に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。

○ 駐車場等で通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。

○ 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすい記述で伝達したりする。本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。

○ 知的障がい等により比喩表現等が苦手な人に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに説明する。

○ 説明をする際には、短く分かりやすい言葉で、口頭に加え手順書で行うなど、複数の方法で実施する。

○ 知的障がいのある人から申出があった際に、二つ以上のことを同時に説明することは避け、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。また、紙等に書いて伝達したり、書面を示す場合には、ルビを付与した文字を用いたり、極力平仮名を用いたりする。

(ルール・慣行の柔軟な変更の具体例)

○ 順番を待つことが苦手な障がいのある人に対し、順番を教えてあとどのくらい待つのか見通しを示したり、周囲の人の理解を得た上で、手続順を入れ替える。

○ 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の人の理解を得た上で、障がいのある人の順番が来るまで別室や席を用意する。

○ スクリーンや板書等がよく見えるように、本人の意向を聞いた上で、スクリーン等に近い席を確保する。

○ 車両乗降場所や駐車場を施設出入口に近い場所へ変更する。

○ 敷地内の駐車場等において、障がいのある人の来庁が多数見込まれる場合、通常、障がいのある人専用とされていない区画を障がいのある人専用の区画に変更する。

○ 障がいに伴い、他人との接触、多人数の中にいることによる緊張によって、不随意の発声等がある場合は、説明の上、施設の状況に応じて別室等のスペースを準備する。

○ 非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障がいのある委員の理解を援助する者の同席を認める。

○ 説明会等において、定期的な休憩を入れたり、個別に説明をする時間を設ける。

障がいを理由とする差別の解消の推進に関する対応要領

平成28年11月14日 訓令第20号/議会訓令第3号/教育委員会訓令第5号/選挙管理委員会訓令第3号/監査委員訓令第3号/農業委員会訓令第3号/公平委員会訓令第2号/固定資産評価審査委員会訓令第2号/消防本部訓令第4号/水道事業訓令第3号

(平成28年11月14日施行)

体系情報
第8編 生/第1章 社会福祉/第5節 障害者福祉
沿革情報
平成28年11月14日 訓令第20号/議会訓令第3号/教育委員会訓令第5号/選挙管理委員会訓令第3号/監査委員訓令第3号/農業委員会訓令第3号/公平委員会訓令第2号/固定資産評価審査委員会訓令第2号/消防本部訓令第4号/水道事業訓令第3号