○公文書作成の手引

平成30年6月8日

第1章 公文書の種類と書式例

公文書は、その性質により、次の表に示すような種類に分類することができる。

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以下、主な公文書の種類ごとに文書の意義及び作成上の注意について、文例を挙げながら記述する。

なお、本書の文例中の「○」「△」は、具体的な文字を挿入すること、「×」は、空白を示すことを表すものとする。

第1節 一般文書

1 対内文書

(1) 起案文書

起案文書とは、事案の処理について、決裁権限を有する者に説明し、許可、決定、承認等の意思決定を受けるために作成する文書である。上司に説明し、その意思決定を受けることを目的にするものであるから、上司が起案の趣旨を容易に理解でき、しかも意思決定の判断を誤ることのないように、要点を的確に捉え、正しく、簡潔に、要領よく整理して記載することが必要である。

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※起案書の記入要領

① 文書記号番号  文書等の発送の必要があるものについては、文書件名簿等の記号番号を記入する。

条例・規則・告示等については、その公布・告示番号等を記入する。

② 分類記号    必要に応じて文書管理に関する分類番号を記入する。

③ 保存期間    佐伯市行政文書管理規程(平成17年佐伯市訓令第12号)における保存期間を記載する。

④ 決裁区分    市長、副市長、部長、課長等の決裁者を記入する。

⑤ 施行上特別扱  書留、速達、配達証明等の特別な送付方法等を表示する。

⑥ 公印使用承認  往復文書等で公印が必要な場合に公印保管者(課長等)が押印する。

⑦ 決裁      決裁を受けたことを確認した日(起案書が起案者に戻った日)を記入する。

⑧ 施行      条例の公布日や、往復文書であれば文書を発送した日を記入する。

⑨ 決裁欄・起案欄 起案者を含め回議案を受けた者が意思決定の認印を所定の位置に押印し、起案者が所属する部課内で順次上司に回議する。決裁権者は、決裁欄に押印する。決裁区分に従い、回議が不要な職名の位置には、斜線などを記入しておく。

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⑩ 合議欄     合議の必要がある場合は課名を記入し、回議案を受けた者が意思決定の認印を所定の位置に押印する。なお、合議は、決裁に先立って行われなければならない。

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⑪ 件名      起案文書の内容が一見して分かるよう簡明なもので、通常は、「○○について(伺い)」とする。

起案は、1事案につき1起案を原則とするが、関連する事案にあっては、一括して処理することができる。

⑫ 欄外下部に佐伯市(本庁起案の場合)又は佐伯市○○振興局(振興局起案の場合)と必ず記入する。

⑬ 起案欄や合議欄等が足りない場合は適宜追加して使用する。

基本例(起案文書の件名と伺い文)

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注1 伺い文の構成について

① 伺いの内容が簡単である場合は、本文で「上記のことについて、○○○○○○○○してよろしいか」として内容(要旨)を述べ、次に理由及び必要に応じて参考資料を掲げれば足りる。

② 伺いの内容が必ずしも簡単でない場合は、必要に応じて「上記のことについて、下記により(別紙のとおり)○○○○○○○○してよろしいか」とし、「下記」、「別紙」、「別表」等を用いる。

2 本文の結びについて

伺い文は、内部における事務上の文書であるから、本文は、簡単に「○○○してよろしいか」とし、「○○○してよろしいかお伺いいたします」など、必要以上に丁寧な書き方はしない。

3 簡潔性、的確性の要請

伺い文を作成する場合は、箇条書などの方法を用いて、伺いの意図するところを努めて簡潔かつ的確に伝えるようにする。

(具体例1)

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(具体例2)

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(具体例3)条例(規則、要綱、規程など)の一部改正の場合

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注1 別紙として条例等案を添付する。

2 決裁者等が添付文書を見なくても、起案文書を読むだけで概要を把握できるように心掛ける。

3 改正内容が複雑であったり、多岐にわたる場合などには、個々的な改正箇所を全て列挙する必要はなく、上司が決裁をするに当たり改正の趣旨を全体的に的確に理解できるように、改正内容を改正の趣旨に沿って項目ごとにまとめて書くようにする。この場合には、改正理由もそれに対応してまとめて書くことになる。

4 新旧対照表について

① 新旧対照表については、(5)新旧対照表を参照すること。

② 条例等のコピーを添付したほうが分かりやすい場合は、コピーの改正箇所に改正内容を朱書きしたものをもって新旧対照表に代えてもよい。

5 起案文書の末尾に条例等の検索の便宜を図るため、例規集の巻とページを記載する(条例等の冒頭のページを記載する。)

6 条例等の制定、全部改正

条例等の制定の場合には、一部改正の文例中「改正内容」を「制定内容」に、「改正理由」を「制定理由」に替え、当該条例等の全体像の概略とその制定理由を要領よくまとめる。条例等の全部改正も一部改正の記載例に準じて記載する。

(具体例3の1)条例の一部改正の実例

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(2) 復命書

復命書とは、職員が上司から会議への出席、特定事項の調査又は事務の打合せ等を命ぜられて出張した場合に、その経過、内容及び結果を上司に報告するために作成する文書である。復命事項の概要は、要領よくまとめ、できるだけ箇条書にする。概要が複雑で長くなるときは、要点と結論を最初に書くようにし、別紙を使用する。2人以上の者が同一内容について同時に復命するときは、連名で作成すればよい。

基本例(復命書)

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(3) 事務説明書・懸案事項書

職員の人事異動又は事務改善による事務の移管等がある場合には、後任者がスムーズに事務を承継し、適切に遂行することができるようにしなければならない。

事務説明書とは、このような場合において、後任者に対する事務の引継ぎを迅速かつ的確に行うために、その担当する事務の概要、処理手順等を説明する文書である。事務説明書は、適宜これを加筆修正し、常に最新の状態を保つように努めなければならない。

懸案事項書とは、事務説明書と同様に人事異動等がある場合において、その担当する事務のうちに、特に処理に注意を要するもの、迅速な処理を要するもの、紛争のおそれのあるものその他懸案となる事項があるときに作成し、後任者に引き継ぐための文書である。

基本例(事務説明書)

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基本例(懸案事項書)

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(4) 始末書・てん末書

始末書及びてん末書は、いずれも事故の手続書で、職員が、職務上又は職務外の問題について何らかの事故を起こした場合に自ら謝罪の意を表し、事故の状況を報告するなどのために作成する文書である。

始末書とは、事故を起こした責任者が所属長に対し、事故発生の原因、経緯、経過、処置など事故の状況を報告するために作成する文書である。また、てん末書とは、事故発生に直接責任がない場合又は事故が軽易な場合に、事故の状況及びてん末を上司に報告するために作成する文書である。

具体例(交通事故に関する始末書)

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具体例(交通事故に関するてん末書)

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(5) 新旧対照表

「新旧対照表」とは、その名のとおり、条例等が一部改正された場合に、条例等のどの部分がどのように改められたのかを分かりやすく対照形式で示したものである。

条例、規則、規程形式の告示及び規程形式の訓令の一部改正の場合に用いるのが主であるが、全部改正の場合においても新旧の違いを説明するのに用いられることがある。

他の場合でも、従来のものと新しいものとを比較する場合に応用できる。

具体例(新旧対照表)

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注1 A4版横向きの書式で、表の左側に「新(改正後)」を、右側に「旧(改正前)」を記載する。

2 改正される条、項、号、別表等のみを適宜抜粋して記載し、改正のない条、項、号、別表等は、記載しない。

3 字句の改正等をする場合には、「新(改正後)」・「旧(改正前)」欄の改正部分のフォントを太字ゴシック体にし、下線を付す。

4 「新(改正後)」・「旧(改正前)」欄において、対応する条、項、号、別表等は、同じ行にそろえる。

5 条、項、号、別表等が削除される場合は、「新(改正後)」欄に「(削る)」と、条、項、号、別表等が追加される場合は、「旧(改正前)」欄に「(追加)」と記載する。

2 対外文書

対外文書とは、一般文書のうち、一般に行政機関相互間又は行政機関と住民との間において、特定の事項を照会し、照会に対し回答し、又は単に通知し、報告するなどするために取り交わされる文書のことである。

なお、対外文書は、往復文書と同意義である。

基本的な書式

対外文書の基本的な書式は、次のとおりである。以下に掲げる各種対外文書の書式は、法令等でその様式等が定められている場合その他特別の事情がある場合を除き、次の書式によるものとする(なお、「記」以下は必要に応じて設けるものとする。)

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注1 文書記号、文書番号及び日付は、用紙の中央やや右から書き出し、終わりは1字分を空ける。

なお、軽易な事案に関する文書にあっては、文書番号を省略して号外とし、「佐○○号外」のようにすることができる。

2 宛名は、日付の行の下に1行をおいて左から1字分を空けて書き出し、敬称には、「様」を用いる。宛先を「各位」とする場合には、「様」等は付けず「各位」のままとする。

3 発信者名は、宛名の行の下に1行をおいて用紙の中央やや右から書き出す。

市の組織内で収発する文書の発信者名は、事案の軽重により副市長又は部若しくは課の長の職名を用いるものとする(氏名を省略する。)

公印は末尾の字にかけ、押した後1字分が空くようにする。公印を省略する場合は、必要に応じ、発信者名の下に「(公印省略)」の表示をする。

4 件名は、発信者の行の下に、1~2行をおいて左から3字分を空けて書き出し、終わりは2字分を空け、2行目の最初の文字は1行目の最初の文字にそろえるのが原則であるが、パソコンが普及した現在は、センタリング機能を用いて中央に収まるようにしてもよい。

なお、件名は、「○○○について」とし、その末尾に当該文書の種類を括弧書にして「○○○について(通知)」というように加えるのを原則とする。

5 本文中「標記の件について…」等という文句は用いず、「上記のことについて」とする。

6 文書で伝えたいことの具体的内容や細目などは「記書き」の形式を用いて箇条書にする。項目を細別する必要があるときは、「1.」「(1).」「ア.」のように「.」や「、」を付けず、「1」「(1)」「ア」のようにし、その後の文字は1字分を空けて書き出す。

なお、「記」の位置は、中央からやや左が原則であるが、現在では件名と同じようにセンタリング機能で中央とするのが通常である。

7 担当部課係名は、本文又は下記の中で明示されている場合を除き、文書の一番下の行の右側に書き、終わりは1字分を空ける。

8 1行の字数及び各行の間隔は、全体の釣合いを考えて決める。

(1) 照会

照会とは、行政機関が、他の行政機関又は住民に対して、特定の事項を問い合わせることをいう。

(例1)

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(2) 回答

回答とは、照会、依頼、協議などに対して、応答することをいう。

(例1)

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(3) 報告

報告とは、法令等による業務を前提として、下級行政機関が上級行政機関に、住民が行政機関に、受託者が委託者に対し、一定事項につき、その事実、経過等を知らせることをいう。

法令等に基づく報告は、その根拠規定を明示する。

(例1)

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(4) 通知

通知とは、行政機関が、一定の事実、処分又は意思を特定の相手方に知らせるために発する文書である。

法令等に基づく通知は、その根拠規定を明示する。

(例1)

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(例2)

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(例3)

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(5) 諮問

諮問とは、行政庁等が、法令の規定により定められた事項につき、一定の機関に意見を求めることをいう。

諮問文書には、諮問事項及び諮問の根拠規定のほか、必要があれば、答申の期限を記載する。

(例1)

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(6) 答申

答申とは、諮問を受けた機関が、諮問事項について、意見を述べることをいう。

答申文書には、諮問文書の日付、文書記号、文書番号及び答申事項を明記するものとし、答申事項については、必要があれば、その理由も併せて明記する。

また、「慎重審議の結果」、「右答申する」などは、用いないようにする。

(例1)

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(例2)

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(7) 協議

協議とは、一定の行為を行おうとする行政機関が、当該行為に関連する権限を有する他の行政機関に相談することをいう。協議の目的は、主として法令、契約等に基づき、相手方に意見又は合意を求めることにある。

法令等に基づいて協議する場合には、その根拠規定を明示する。

協議に対する返答は、「回答」とするのが一般的である。

(例1)

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(8) 依頼

依頼とは、住民や行政機関に対して、調査、講師の派遣その他一定事項を頼むことをいう。

冗長な言い回しを避け、必要に応じて箇条書等を用いて、依頼の趣旨を明確にする。

(例1)

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(例2)

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(9) 申請・願い

申請・願いとは、所管の行政機関に対し、許可、認可、補助等の一定の行政行為を求めるものである。

通常、法令等によって様式が定められているので、その様式に従うものとし、様式等が定められていない場合には、表や箇条書等の方法を用い、何を、どのような条件等の下に求められているかを明確に示す。

法令等に基づいて申請する場合には、申請文の中にその根拠規定を明示する。

(例1)

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(例2)

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(10) 届け

届けとは、法令等の規定に基づき、一定事項を行政機関等に知らせることをいう。報告と異なり、過去の事実等だけでなく、計画、予定事項など将来の事柄を知らせる場合にも用いられる。また、申請のように、相手方の行政機関に対して何らかの行為を要求するものではない。

法令等に基づく届けは、その根拠規定を明示する。

(例1)

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(11) 勧告

勧告とは、行政機関が、権限に基づき、住民又は指揮命令関係にない機関に対し、一定事項を申し出て、ある処置や対策等一定の行為を勧め、又は促すことをいう。

勧告書には、法令等の根拠を記載する。

(例1)

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(例2)

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(12) 督促

督促とは、請求又は照会などで求めた行為を促すことをいう。通常、督促は、金銭債権について、債務者がその納付の期限を過ぎて、なおその債務を履行しない場合に、強制徴収に入る前に期限を指定してその納付を催告するときに用いられる。

こちらからその行為を求めた請求、照会等の文書及び促すべき行為を明示し、事案によっては、履行、報告、回答その他求めた行為が行われないために生じている障害その他の事情及びその行為が行われなかった場合の処置などをよく知らせるものとする。

(例1)

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第2節 例規文書

1 条例

条例とは、地方公共団体がその事務について、制定する自主法である。この条例制定権の根拠は、憲法第94条であり、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」と規定されている。また、地方自治法第14条第1項においては、「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる」と規定されている。ここにいう第2条第2項の事務とは、「地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの」で、いわゆる「自治事務」と「法定受託事務」であり、地方自治法第2条第8項及び第9項に定められている事務である。

条例は、地方公共団体の議会の議決を経て制定する法である。地方自治法第96条第1項第1号では、「条例を設け又は改廃すること」が地方公共団体の議会の議決事項として掲げられている。

条例は、憲法では「法律の範囲内で」、地方自治法では「法令に違反しない限りにおいて」制定することができるとされている。ここにいう法令の中には、法律以外の命令すなわち政令、省令等も含まれる。もし、条例が国の法令に違反する場合には、その違反の限度において当該条例は無効となる。

条例は、一定の時間、一定の地域及び一定の人に対してその効力を及ぼす。まず、条例は、施行によって初めて法令としての効力を有することになる。条例の施行期日は、通常は条例の附則で規定されるが、附則にその規定のない場合には、公布の日から起算して10日を経過した日から施行される。また、条例には、その終期を規定しないのが通例であるから、その条例が廃止されない限り効力を有する。なお、条例の消滅については、時限立法の形式がとられる場合がある。次に、条例は、地方公共団体の自主法であるから、原則として当該地方公共団体の区域に限り施行され、他の地方公共団体の区域には効力を及ぼさない。ただし、例外的に他の地方公共団体の区域にも効力を及ぼすことがある。例えば、地方公共団体がその区域外に公の施設を設置した場合、他の地方公共団体に事務委託をした場合等がこれに当たることとなる。さらに、条例は、当該地方公共団体の区域内の全ての人に対して適用される。したがって、条例の内容によっては、当該地方公共団体の住民のみならず、区域内の一時滞在者や物件の所有者などにも効力が及ぶこととなる。

条例には、条例の実効性を担保するため一定限度内の罰則を定めることができる。地方自治法第14条第3項では、「その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる」ことを定めている。

条例の規定の表現に当たっては、その条例において規定しようとする内容を表すのに最も適当な言語的表現をしなければならず、その表現が、どのようにでも解釈できる曖昧なものであってはならない。このようなことから、条例に用いられる用語は、広義や多義にわたる漠然としたものは極力避け、法令上の慣用語がある場合にはそれを用い、必要に応じ用語の定義を行うなどにより、解釈適用上疑義を生じないようにしなければならない。また、条例の規定は、口語体により平易かつ明瞭に表現するものとし、その内容が立案者や行政庁だけでなく、住民一般に理解できるものでなければならない。ただ、条例は、法規として住民の権利義務を規制するものであるから、条例の解釈適用上疑義が生じないようにするため、表現の平易化には、おのずから限界があり、法規文として特殊な表現方法をとらざるを得ない部分がある。

(1) 新たに制定する場合

基本的な書式

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① 用紙サイズ

用紙サイズは、A4サイズを用いる。

② 公布文

公布文とは、条例等を公布する旨の公布権者の意思を表明する文書をいう。議会の議決を経て成立した条例や長の制定した規則等は、公布されることによって効力を生じる。佐伯市公告式条例(平成17年佐伯市条例第3号)第2条の規定により、条例を公布しようとするときは、公布の旨の前文及び年月日を記入して、その末尾に市長が署名しなければならないことになっており、これは、同条例第3条の規定により規則の公布に準用されている。

③ 条例番号

条例番号は、当該条例を特定するための手段として付けられるもので、通常、暦年ごとに1月から公布される順に付けられる。

④ 題名

条例には、題名が付けられる。題名は、簡潔であるとともに、その条例の内容を端的に表し、他の条例との紛れが生じないものでなければならない。この二つの要請は、両立し難い場合も多いと思われるが、一般的には簡潔性に重点を置くこととされている。

条例の題名は、4字目から書く。題名が長く、2行以上にわたる場合には、1行目を一番右端まで書き、第2行目以下の行の書き出しは、第1行目の書き出しにそろえ、4字目から書き始める。

⑤ 見出し

条には、検索の便宜と内容の理解を助けるため見出しを付する。見出しは、その条の内容を簡明かつ的確に表すような表現にしなければならない。

なお、見出しは、条ごとに付するのが通例であるが、後に続く複数の条が共通の内容を有する場合には、これらを一まとめにしてその見出しをこれらの条の最初の条の前に一括して置くことがあり、これを「共通見出し」という。前記書式の場合は、第2条の前の見出しは、第2条と第3条の共通見出しとなっている。

⑥ 条、項、号等

本則は、その内容が極めて簡単である場合を除き、条に区分する。一つの条を更に規定内容に従って区分し、行を改めて書き出した場合の段落のことを項といい、第1項から順次項番号を付ける。ただし、第1項は、第2項以下と異なり項番号は付けない(項の数が一つであるときも同様に項番号は付けない。)

項の中においていくつかの事項を列記する場合には、横書きの条例等においては、「(1)(2)(3)、…」と括弧書の数字を付けて列記し、これを号という。

なお、条文数等が多い条例を一部改正しようとする場合において、ある条項を追加することによって、既存の条項を大幅に繰り下げる必要が生じ、極めて煩雑になるようなときは、条及び号には枝番号(第1条の2、第3号の2など)を付けることが認められているが、項には枝番号を付けないこととされている。また、逆に、ある条項を廃止することによって、既存の条項を大幅に繰り上げる必要が生じるようなときは、条及び号には、「第○条 削除」又は「(○) 削除」という形で条や号の形骸を残す方法が認められるが、項には認められていない。このような取扱いの差異は、条や号は明治時代からその名称が認知されていたのに対し、項は条文中の単なる段落にすぎず、昭和20年代の初め頃までは認知されていなかったという経過に由来するとされている。

⑦ 前段、後段、本文、ただし書等

ある条や項が二つの文章から成っている場合には、前の文章を「前段」、後ろの文章を「後段」という。

後段に当たる部分が「ただし、…」で始まる場合には、その部分を「ただし書」と呼び、前段に当たる部分を「本文」と呼ぶ。

⑧ 他の法令等の引用

条例、規則等において他の法令等を引用する場合には、「○○○○法(○○○年法律第○○号)」、「○○○○法施行令(○○○年政令第○○号)」、「○○○○条例(○○○年佐伯市条例第○○号)」というように題名と法令(条例)番号を併記する。条例等において他の法令等を何度も引用する場合には、最初の引用のときにおいてその法令等の題名と法令(条例)番号を併記し、2回目以降はその法令等の題名だけを掲げればよい。なお、ある法令等を何度も引用する場合には、最初の引用のときに「○○○○法(○○○年法律第○○号。以下「法」という。)」として略称規定を設け、2回目以降は単に「法」という略称だけを用いるようにすることもできる。条例等において引用しようとする法令が未公布である場合には、法令番号は空白のままで引用する。

⑨ 規定の引用の方法

条例、規則等において当該条例、規則等の他の規定を引用する場合は、通常「第○条(第○項第○号)」とする。ただし、次のような例外がある。

(1) 直前の条、項、号の引用

ア 直前の一つの条、項、号を引用するときは、前条、前項、前号とする。

イ 直前の連続する複数の条、項、号を引用するときは、

(ア) 引用しようとする直前の条、項、号が二つであるときは前2条、前2項、前2号とし、引用しようとする直前の条、項、号が三つであるときは前3条、前3項、前3号とする。

(イ) 引用しようとする直前の条、項、号が四つ以上であるときは、「第○条から前条まで」、「第○項から前項まで」、「第○号から前号まで」とする。ただし、この場合に、直前の全ての条、項、号を引用するときは前各条、前各項、前各号とする。

(2) 直後の条、項、号の引用

ア 直後の一つの条、項、号を引用するときは、次条、次項、次号とする。

イ 直後の複数の条、項、号を引用するときは、

(ア) 引用しようとする直後の条、項、号が二つであるときは、「次条及び第○条」、「次項及び第○項」、「次号及び第○号」とする。

(イ) 引用しようとする直後の条、項、号が三つ以上であるときは、「次条から第○条まで」、「次項から第○項まで」、「次号から第○号まで」とする。

(3) 同一の条文中における2回以上の引用

同一の条文中において直前に出てきた条、項、号を再び引用する場合には、「第○条(第○項、第○号)」と繰り返さず、「同条(同項、同号)」と表現する。この場合、直前に出てきたものが第○条第○項又は第○条第○項第○号であっても、「同条同項(同条同項同号)」とはせずに単に「同項(同号)」だけでよい。ただし、「同」とは直前の語を受けるものであるから、同一の条文中の中間に別の条等が入っているような場合には、「同条、同項、同号」とすることはできない。例えば、「第5条第1項の規定は第1項の場合に、同条第2項の規定は前項の場合にこれを準用する。」(同条は第5条を意味する。)という用い方はよいが、「第5条第1項及び第7条の規定は第1項の場合に、同条第2項の規定は前項の場合にこれを準用する。」とすることはできず(「同条」の直前の条は第7条であるから、「同条」は第7条を意味することになる。)、この場合には「同条第2項」を「第5条第2項」としなくてはならない。

⑩ 附則

附則は、本則に付随する事項を規定するものである。附則には、通常、項を置き、項が複数のときは「1、2、3…」のように項番号を付け、項が一つのときは、項番号は付けない。

⑪ 表

規定内容が場合分けを必要としたり、数を並べたりする場合などには、文章で書くより表を用いて表現したほうが正確かつ便利で、読む者にとっても理解がはるかに容易になる場合が多い。表のうち、その内容が比較的簡単で量的にもさほど多くないものは、条文中に置かれ、それ以外の場合には「別表」として附則の後に置かれる(なお、附則自体にも別表が置かれることがあり、これは「附則別表」と呼ばれ、この場合には本則の別表は、附則別表の後に置かれる。)

別表には、その元となる条文との関係を明らかにするため、「別表(第○条関係)」として関係のある条名を示すようにする(この場合、関係のある項、号までは示さないのが通例である。)

多くの場合、表には縦横に区切りがあるが、このうち横の区切りを項(横の区切りが多い場合には部・項又は部・款・項)、縦の区切りを欄と呼び、表中の字句の一部を改正する場合には、この項(及び部・款)と欄を適宜用いて、改正しようとする部分を特定することになっている。

改正箇所の特定の仕方を例示すると、次のとおりである。

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⑫ 様式

申請書や届出書等の様式を示す必要がある場合には、「別記様式」として示す。様式が二つ以上あるときは「様式第1号」、「様式第2号」、「様式第3号」等とする(この場合、従来から「第1号様式」という書き方と「様式第1号」という書き方の両方が用いられてきたようであるが、「様式第○号」という表記に統一する。)

様式においても、表と同様、その元となる条文との関係を明らかにするため、「様式第○号(第○条関係)」として関係のある条名を示す(この場合、関係のある項、号までは示さないことも表の場合と同様である。)

様式は、附則の後に置かれる。附則の後に別表があるときは、別表の後に置かれる。

(2) 全部を改正する場合

条例の全部改正とは、一部改正のように条例の字句や表などの一部を部分的に改めるのではなく、既存の条例の全体を一括して改正することをいい、実質的には新たな条例を制定するのと同様の意味を持つ。

条例の内容を全体にわたって書き改める方法としては、新規に条例を制定し、旧条例を廃止する方法と、条例の全部改正による方法とがある。「制定・廃止の方法によるか全部改正の方法によるべきか」については一定の明確な基準があるわけではないが、一般的には、ある条例の立法趣旨や制度の基本を維持しつつ、これらを実施するための具体的な規定を全体的に改めようとする場合には全部改正の方法により、制度改正の前後において立法趣旨や制度の継続性を強調する必要がない場合やその継続性がさほど強くない場合などには新規制定・廃止の方法によることが多いとされている。

また、「一部改正の方法によるか全部改正の方法によるか」についても明確な基準はないが、改正部分が広範囲に及び、しかも規定の追加、削除、移動等が大規模に行われる場合のように、一部改正の方法では改正が複雑で分かりにくくなる場合などには全部改正の方法によることが多いとされている。

なお、条例が全部改正されると、その条例についてそれまでに改正された一部改正の附則も全部整理されることになる。

基本的な書式

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① 全部改正する場合の条例の題名

全部改正する場合の条例の題名は、一部改正の場合のように「佐伯市○○○○○条例の全部を改正する条例」とはしないで、全部改正される条例の題名を付ける。例えば、「佐伯市職員給与条例」を全部改正しようとするときは、全部改正条例の題名は、「佐伯市職員給与条例」とする。

なお、ある条例を全部改正するとともに、同時にその条例の名称も変更するときには、題名は、全部改正後の条例の題名を付ける。例えば、「佐伯市職員給与条例」を全部改正するとともに、その題名も「佐伯市職員の給与に関する条例」に変更しようとするときは、全部改正条例の題名は「佐伯市職員の給与に関する条例」とする。

② 制定文

題名の次に全部改正の趣旨を明らかにするための制定文が付けられる。制定文は、「○○○○○条例(○○○年佐伯市条例第○号)の全部を改正する。」とし、「○○○○○条例(○○○年佐伯市条例第○号)の全部を次のように改正する。」とはしない。

③ 附則

附則には、全部改正される条例を廃止する旨の規定を置かない。

(3) 一部を改正する場合

既存の条例の一部改正は、既存の条例の一部を改正するための別個独立の条例を制定・施行させることによって行われる。この既存の条例の一部を改正する条例も、題名、本則及び附則から構成され、それ自体一つの独立した条例として、条例番号が付けられる。

一部改正条例の本則の部分においては、「第○条中「○○」を「△△」に改める」「第○条中「○○」を削る」「第○条を次のように改める」というように、既存の条例の具体的な改正が示される。そうして、この一部改正条例が施行されると、本則の改正部分に示されたとおりに、既存の条例が改正される(改正内容が既存の条例に溶け込む)ことになる。このような方式は、「溶け込み方式」と呼ばれ、我が国では、従来から法令の一部改正のための方式として用いられてきた。

このように、一部改正条例の本則の部分は、施行と同時に、既存の条例に溶け込んで一体となり、その使命を達成するわけであるが、これに対して、附則の部分は、そのまま(溶け込みようがないので)残ることになる(もっとも、附則の中でも、他の条例の一部改正をしている部分は、当該他の条例に溶け込んでなくなってしまう。)。この残された附則の部分は、例規集を編集するときに、元の条例の附則の次に、条例番号を括弧書で付した上、順次付け加えられることになっている。

ア 本則で改正する場合

(ア) 改正する条例が一つの場合

基本的な書式

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(イ) 改正する条例が二つ以上の場合

一つの条例で二つ以上の条例を同時に改正するこの方式は、共通の動機、理由等によって複数の条例を改正する必要が生じた場合等に用いられる。改正規定の配字は、「本則で改正する条例が一つの場合」より1字ずつ下げる。

基本的な書式

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注:題名が「○○○条例等の一部を改正する条例」となるのは、同時に改正する条例が三以上の場合である。同時に改正する条例が二つの場合は、「A条例及びB条例の一部を改正する条例」のように「及び」を使う。

イ 附則で改正する場合

制定条例又は一部改正条例の附則において、既存の条例の一部を改正することがある。これは、新たな条例の制定又は既存の条例の改正に伴って、他の条例を改正する必要が生じた場合に行われる。

基本的な書式

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(4) 廃止する場合

条例を廃止する場合には、通常、当該条例を廃止するための条例を新たに制定する方法と別の条例の附則で廃止する方法とがある。しかし、本市においては、条例を廃止するために「佐伯市条例の廃止に関する条例」が制定されているので、条例を廃止しようとするときは、「佐伯市条例の廃止に関する条例の一部を改正する条例」を新たに制定する方法又は他の条例の附則において「佐伯市条例の廃止に関する条例」の一部改正を行う方法による。具体的には、「佐伯市条例の廃止に関する条例」本則各号の末尾に廃止しようとする条例を加えていく。廃止する条例が二つ以上ある場合は、当該廃止すべき条例を列記する。

ア 「佐伯市条例の廃止に関する条例の一部を改正する条例」を新たに制定する場合

基本的な書式

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イ 他の条例の附則において「佐伯市条例の廃止に関する条例」の一部改正を行う場合

基本的な書式

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(5) 条文改正等の文例

ア 題名の改正

(ア) 題名の全部を改正する場合

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(イ) 題名の一部を改正する場合(長い題名のごく一部を改正する場合のみ)

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イ 目次の改正

(ア) 目次の全部を改正する場合

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(イ) 目次の一部を改正する場合

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ウ 見出しの改正

(ア) 見出しの全部を改正する場合

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注 共通見出しの場合には、「第○条の前の見出しを「(○○○○○○○)」に改める」とする。

(イ) 見出しの一部を改正する場合

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注 共通見出しの場合は、「第○条の前の見出し中」とする。

(ウ) 見出しのない条に見出しを付ける場合

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注 共通見出しを付ける場合には、「第○条の前に見出しとして「(○○○○○○○)」を付する」とする。

(エ) 見出しを削る場合

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注 共通見出しを削る場合には、「第○条の前の見出しを削る」とする。

エ 条、項、号の改正

条、項、号の改正は、前の方の条、項、号から順を追って、一つの条ごとに一つの改正規定で行うことを原則とする。

(ア) 条、項、号の全部改正

a 条の全部改正

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b 項の全部改正

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c 号の全部改正

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注1 連続する二つの条(項)(号)の全部を改める場合には、「第○条及び第○条(第○条第○項及び第○項)(第○条(第○条第○項)第○号及び第○号)を次のように改める」とし、連続した三つ以上の条(項)(号)を改める場合には、「第○条から第○条まで(第○条第○項から第○項まで)(第○条(第○条第○項)第○号から第○号まで)を次のように改める」として条(項)(号)を並べて書く。

2 各号の全部を改める場合には、改正後の号数が改正前の号数より多くなっても少なくなっても、「第○条(第○条第○項)各号を次のように改める」として改正後の各号を書く。

d ただし書の全部改正

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e 後段・各号列記以外の部分の全部改正

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(イ) 条、項、号の一部改正

条、項、号の一部改正は、改正する部分を条、項、号、本文、ただし書、前段、後段、各号列記以外の部分等と特定して、字句を改めたり、加えたり、削ったりすることによって行う。

a 条、項、号中の字句を改正する場合

(a) 一つの条、項、号中の字句を改正する場合

i 字句を改める場合

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注1 改正する字句の引用に当たっては、一つの独立した意味を持つ字句を単位として引用する。例えば、「○○○3,000円以上○○○」を「○○○5,000円以上○○○」に改める場合は、「第○条中「3,000円」を「5,000円」に改める」とする。

2 一つの条、項、号中に同一の字句が二つ以上あり、そのうちの一部の字句のみを改める場合やそれぞれを異なった字句に改める場合には、改めようとする字句の前後の字句を含めた適正なまとまりを引用し、他の字句との区別を明確にする。

3 読点「、」は、その次の字句に従属するものであるから「○○○A及びB○○○」を「○○○A、B及びC○○○」に改める場合は、「「及びB」を「、B及びC」に改める」とする。

4 句点「。」の付いた文の文末を改める場合には、文末の句点は共通のものであるから引用せず、例えば、「○○○しなければならない。」を「○○○するものとする。」に改める場合は、「「○○○しなければならない」を「○○○するものとする」に改める」とする。

ii 字句を加える場合

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注 条文の冒頭に字句を加える場合には、「第○条中「○○」を「△△○○」に改める」とする。

iii 字句を削る場合

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iv 種々の字句の改正がある場合

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(b) 二つ以上の条、項、号中の字句を改正する場合

i 一つの条の中の二つ以上の項、号中の字句を改正する場合

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注 条、項、号を重ねて引用するときは、後の条、項、号は、同条、同項、同号と引用する。

ii 二つ以上の条、項、号中の同一の字句を改正する場合

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注1 他の改正が中途に加わらない限り、まとめて改正を行う。中途に他の改正が入る場合には、その条文の前で一旦区切り、その条文の前のグループの改正、当該条文の改正、その条文の後のグループの改正の順に改正する。

2 一つの条の各項、号中の同一の字句を改正するような場合には、項、号ごとに区分することなく、条、項単位で単に「第○条(第○条第○項)中「○○」を「○○○」に改める」とする。

3 本則又は章中に用いられている数多くの同一の字句を全て他の字句に改める場合には、改正の冒頭において「本則(第○章)中「○○」を「○○○」に改める」とまとめて改正し、他の改正は第1条の方から順に行う。

iii 一つの条、項の各号全部にわたって同一の字句を改正する場合

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(ウ) 条、項、号の追加

条、項、号を追加する場合には、繰下げ方式と枝番号方式の2通りの方式がある。

繰下げ方式は、既存の条、項、号を繰り下げ、これによってできたスペースに、新たな条、項、号を追加するものである。枝番号方式は、枝番号を用いて新たな条、号を追加するものであり、既存の条、号を繰り下げることが煩雑である場合や繰り下げる条、号を引用している規定が他に多数ある場合に用いられる。

項については、枝番号は用いられない。項は条の中の文章の段落にすぎず、一つの単位として他から区別される内容を持つものではないからである。

繰り下げる条、項、号の数が三つ以下の場合には、一つの条、項、号ずつ繰り下げる。

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繰り下げる条、項、号の数が四つ以上の場合には、末尾の条、項、号を繰り下げた後に、残りの条、項、号を一括して繰り下げる。

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a 新たな条、項、号を既存の条、項、号の冒頭に追加する場合

既存の条、項、号の全てを繰り下げて追加する方式と、既存の第1条、第1号だけを枝番号を用いて繰り下げて追加する方式の2通りの方式がある。

(a) 条の場合

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(b) 項の場合

項の場合は、枝番号を用いることがないので、常に繰下げ方式による。

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(c) 号の場合

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b 新たな条、項、号を既存の条、項、号の間に追加する場合

(a) 条の場合

追加する条の後に位置することとなる既存の条を繰り下げて追加する方式と、新たな条を枝番号にして追加する方式の2通りがある。

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(b) 項の場合

常に繰下げ方式による。

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(c) 号の場合

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c 新たな条、項、号を既存の条、項、号の最後に追加する場合

(a) 条の場合

本則の最後の条を捉えて「第○条の次に次の○条を加える」とする方式と、「本則に次の○条を加える」とする方式の2通りがある。

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(b) 項の場合

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(c) 号の場合

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(エ) 条、項、号の廃止

条、項、号を廃止する場合には、「削る」方式と「削除」方式の2通りの方式がある。

「削る」方式は、既存の条、項、号の最後のものを削るような場合を除いて、後続する条、項、号を繰り上げる必要が生じる。これに対して「削除」方式は、廃止する条、号を「第○条 削除」等として、当該条、号の形骸だけは残しておくものである。繰り上げることが煩雑である場合や、繰り上げる条、号を引用している規定が他に多数ある場合に「削除」方式が用いられる。

項については、枝番号が用いられないのと同様に、「削除」方式も用いられない。

a 条、項、号を削る場合

(a) 繰上げの必要がない場合

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(b) 繰上げの必要がある場合

三つ以下の条、項、号を繰り上げる場合には、一つの条、項、号ずつ繰り上げ、四つ以上の条、項、号を連続して繰り上げる場合には、まず削られる条、項、号の直後の条、項、号を繰り上げ、その後の条、項、号は一括して繰り上げる。

i 条の場合

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ii 項、号の場合

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b 条、号を「削除」とする場合

(a) 一つの条、号を「削除」とする場合

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(b) 連続する二つ以上の条、号を「削除」とする場合

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オ 表・別表の改正

(ア) 表・別表の全部改正

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(イ) 表・別表の一部改正

a 通常の場合

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b 改正部分を項によって特定する場合

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c 改正部分を項と欄によって特定する場合

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d 項全体を改める場合

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e 項を追加する場合

(a) 冒頭に追加する場合

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(b) 中間に追加する場合

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(c) 最後に追加する場合

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f 項を削る場合

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(ウ) 表・別表の追加

a 表・別表のない場合に新たに追加する場合

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b 表・別表のある場合に更に冒頭に別表を追加する場合

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c 表・別表のある場合に更に中間に別表を追加する場合

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d 表・別表のある場合に更に最後に別表を追加する場合

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(エ) 表・別表の廃止

a 形骸を残さないで削除する場合

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b 形骸を残して削除する場合

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カ 様式の改正

様式の改正は、別表の改正に準じて行う。

(ア) 様式の全部改正・一部改正

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(イ) 様式の追加

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(6) 規定の文例

ア 目的規定

(ア) 文例

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注 今日の条例では、一部改正条例や内容の簡単なものを除き、そのほとんどが第1条に目的規定を置くのが通例である。目的規定を置くことによって、どんなに膨大な条例でもその趣旨や内容のあらましが理解できるし、個々の規定の解釈の指針が示されることになる。

条例の内容が多岐にわたっていることから、その目的規定の書き方にも多様なものがあり得るが、一般的には、その条例が、何を、どうしようとしているのか(手段)について述べ、次いでその狙いとする最終の目的を掲げる(目的)という、「手段―目的」という構成パターンによるものが多い。いずれにしても、その条例の意図するところを簡明にして要を得た文章で表すことが必要である。

(イ) 具体例

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イ 趣旨規定

(ア) 文例

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注 趣旨規定とは、条例制定の目的というよりは、条例の内容だけを要約して規定したものである。

条例の内容等により、目的規定を置くほどでもない場合には、その条例の内容を簡明に要約した趣旨規定が第1条に置かれるのが一般的である。

また、条例のうち、法律や政令の委任によりその実施細目を定める委任事務条例においては、その施行細則的な性質から、法律で既にうたわれている目的を再度繰り返すことを避け、その条例で定めようとする内容だけを要約して規定する趣旨規定を設けることが多い。本市においても、法律や政令の委任に基づく条例については、特別の事情がない限り、第1条には趣旨規定を置くものとする。

(イ) 具体例

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ウ 設置規定

(ア) 文例

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注 機関、施設、基金等の設置を内容とする条例においては、第1条で「○○○するため、○○○を設置する」として、目的とともに当該機関等を設置する旨を規定するものが多い。条例の内容が複雑である場合等を除き、機関等の設置に関する条例においては、設置規定によることができる。

(イ) 具体例

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エ 定義規定(略称規定)

(ア) 文例

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注 定義規定は、その条例で数多く使用される用語の意味を明確にするため、これらの定義付けをすることを内容とする規定である。定義規定が置かれることによって、条例が分かりやすいものとなるとともに、条例の解釈、適用に一貫性を持たせることができることになる。

条例における用語の意味は、社会通念に合わせた用い方をすべきであって、立案者の一方的な判断により、その言葉の社会一般の通用範囲から余りにそれたような意味を持たせることは好ましくない。このような前提の下に、定義規定においては、厳密かつ明確な定義付を行わなければならない。

例1及び例2は、総則的規定としての定義規定である。条例において重要な意義を有する用語や頻繁に用いられる用語についてまとめて規定し、目的規定・趣旨規定の次に置かれるのが一般的であり、その定義は定義規定の前にある条文も含め、当該条例の全体に及ぶ。

例3及び例4は、括弧書による定義規定及び略称規定である。条例の中で部分的にしか用いられない用語について定義をする場合には、個々の規定の中で括弧書により行う。また、当該用語が条例において重要な意義を有する用語や頻繁に用いられる用語であっても、条例全体の構成からまとまった定義規定を置く必要がない場合で当該用語について定義する場合にも、個々の規定の中で括弧書により行う。略称規定については、条例中の一定範囲の字句に略称を与える規定であり、長い表現を繰り返し用いるのを避けて、条文を簡潔にするためのものである。括弧書による定義規定及び略称規定は、その置かれた位置以後の規定に及ぶ。

(イ) 具体例

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オ 規定の準用

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カ 規定の適用

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キ 委任規定

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ク 罰則

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注1 「○○○○に処することができる」とは書かない。

2 罰則を設ける場合、罪刑法定主義(憲法第31条、第39条前段)の要請により、構成要素等を定める規定の内容は可能な限り明確に定めなければならない。

(7) 附則の文例

ア 附則における規定の順序

(ア) 当該条例の施行期日に関する規定(必要に応じて遡及適用、適用区分、適用延期などに関する規定)

(イ) 他の条例の廃止に関する規定

(ウ) 当該条例の施行に伴う経過規定

(エ) 本則に対する特例に関する規定

(オ) 他の条例の一部改正に関する規定

(カ) 当該条例の有効期限に関する規定

(キ) その他の規定

イ 施行期日等に関する規定

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ウ 他の条例の廃止に関する規定

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注 本市では、附則で条例を廃止するときも、佐伯市条例の廃止に関する条例の一部改正の方法によるので(47ページ参照)、条例に関する限り、この方法は用いない。

エ 当該条例の施行に伴う経過規定

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オ 本則に対する特例に関する規定

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カ 他の条例の一部改正に関する規定

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キ 当該条例の有効期限に関する規定

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2 規則

一般に「規則」とは、地方公共団体の長が、法令の範囲内において、その権限に属する事務に関し制定する自主法の形式をいう(地方自治法第15条第1項)

規則で規定できる事項は、地方公共団体の長の権限に属する事務に限られ、また、法令に違反しない限度に限られる。

(1) 新たに制定する場合等

規則を新たに制定する場合、全部又は一部を改正する場合等の規則の書き方、作成上の留意点その他は、廃止する場合を除いて条例に準ずる。

(2) 廃止する場合

規則を廃止する場合には、当該規則を廃止するための規則を新たに制定する方法と別の規則の附則で廃止する方法とがある。既存の規則を廃止することを直接の目的とする場合には、当該規則を廃止するための規則を新たに制定し、別の規則の制定又は改正に伴い既存の規則を廃止する必要が生じた場合には、別の規則の附則で廃止する。

ア 「規則を廃止するための規則」を新たに制定する場合

基本的な書式

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イ 別の規則の附則で廃止する場合

基本的な書式

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第3節 令達文書

1 訓令

訓令とは、上級行政機関又は上級職員が、下級行政機関又は下級職員に対し、その指揮監督権に基づいて、権限の行使又は職務を指揮するために発する命令の総称である。

本来、訓令とは、下級の行政機関に対する命令をいい上級職員が下級職員個人に対して発する職務命令は含まないとされるが、訓令という形式を用いる職務命令も多く、実際には両者の区別は困難であるから、一般に訓令という場合には職務命令を含めて用いる場合が多いとされる。

訓令は、上級行政機関等と下級行政機関等との間で効力を持つ行政組織内部における規範であり、行政組織外の者、例えば住民に対しては直接には何らの法的効果も持たない。このように、訓令は、本来、行政組織の内部においてのみ意味を持つにすぎず、住民の権利、義務を直接規定する法規たる性質を有しない(訓令の内部行為的性質)。したがって、訓令で住民の権利、義務に直接影響を与えることを目的とする規定を設けることはできないので、注意しなければならない。

訓令は、その内部行為的性質から、条例や規則などと違い、公示することは効力発生要件ではない。しかし、内容によっては住民に知らせることが必要である場合や住民が知っている方がよい場合等があるので、公示されることも多い。

訓令は、行政組織内部の規範であって、直接住民に対する法的効果を有するものではない。したがって、住民に対する関係においては、ある処分が訓令に違反して行われても、訓令違反との一事のみによって直ちに当該処分が違法となることはない(訓令に違反した職員に懲戒責任の問題が生ずることは別問題である。)。住民は、訓令に違反した処分によって不利益を受けた場合であっても、単に訓令違反のみを理由として処分の違法を主張することはできない。逆に、ある処分が訓令に適合して行われたとしても、そのことから直ちに行政組織外にある住民に対する関係においても当該処分が適法となるものではない。訓令は、あくまでも行政組織内部において職員が守るべき規準にすぎないからである。

訓令は、行政組織内部の規範であって、直接住民に対する法的効果を有しないから、住民は、違法な訓令によって事実上不利益を受けても、訓令それ自体の取消し等を求めて裁判を起こすことはできない。

1―1 規程形式をとる場合

(1) 制定する場合

ア 基本的な書式

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① 訓令番号:訓令番号は、総務部総務課において暦年ごとに一連番号を付ける。

② 令達先:令達先は、原則として「本庁」と「出先機関」を列記する。特定の部(課)のみを対象とするときは「○○部(○○課)」とする。

訓令の個々の規定等の書き方は、条例に準ずる。

イ 具体例

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(2) 一部を改正する場合

基本的な書式

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(3) 廃止する場合

ア 廃止する訓令が一つである場合

基本的な書式

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イ 廃止する訓令が二つ以上である場合

基本的な書式

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1―2 規程形式をとらない場合

(1) 制定する場合

基本的な書式

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注1 訓令番号は、総務部総務課において暦年ごとに一連番号を付ける。

2 上記の2種類の書式のうちいずれによるかは、訓令本文の量、内容等により適宜選択する。

(2) 一部を改正する場合

基本的な書式

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(3) 廃止する場合

基本的な書式

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2 指令

指令とは、行政庁が法令上の権限に基づき、特定の個人又は団体などに対し、許可、認可、特許、命令、禁止、停止などの行政行為をしたり、又は既に与えた許可、認可、特許などの行政行為を取り消す場合などに用いる文書の形式をいう。

指令は、行政庁が行政行為をする場合の形式であるから、指令を受けた特定の相手方は、これによって拘束されることになる。しかし、行政庁が、法令に基づいて一方的に命令(禁止)し、又は一度与えた許認可を取り消す場合で相手方がその処分に不服があるときは、不服申立て等の行政争訟の提起ができる。また、行政行為が相手方の申請に基づいて行われる場合でも、当該申請の却下、行政庁の不作為に対して、申請者は不服申立て等の行政争訟の提起ができる。行政行為を内容とする指令には、許可、認可、特許などの用語が用いられる。

(1) 許可、認可等行政行為のうち主なものの意義

ア 許可 法令等による一般的禁止(不作為義務)を一定の要件が具備されている特定の場合に解除し、適法に一定の行為をすることができるようにする行政行為をいう。例えば、医師の免許、風俗営業の許可、公衆浴場営業の許可などである。

許可は、不作為義務を解除し、事実として特定の行為をする自由を回復させる行為で、権利又は能力の発生、変更又は消滅を目的とする特許等とは区別される。

実定法上では、用語が一定せず、許可、免許、登録、指定、確認の語が混用されている。

イ 認可 認可を受けようとする者が、他の者(第三者)との間で行う契約、合同行為等の法律行為の効力を補充して、その法律上の効力を完成させる行政行為をいう。例えば、土地改良区等公共組合の設立の認可、農地の所有権の移転の許可、地方公共団体の起債の許可等である。

認可の対象である法律行為には、それ自体公法上の法律行為である場合(公共組合の定款の変更の認可、土地区画整理組合の換地処分の認可)もあれば、私法上の法律行為である場合(河川占用権の譲渡の承認)もある。

認可の法律効果は、認可を受けようとする者が他の者との間で行う法律行為の効力の完全な発生である。この効果は、認可する行政庁以外の当事者間に生じるから、この意味では、認可は、「第三者のために生じる行為」である。認可は、法律行為の効力要件であり、認可を受けないでした行為は、原則として無効である。

実定法上では、許可などの語が混用されている。

ウ 特許 特定人のために、新たに特定の権利(公物使用権、鉱業権)、権利能力(公益法人の設立)又は包括的な法律関係(公企業の特許)を設定する行政行為をいう。その法律効果は、相手方における一定の権利又は権利能力の発生であり、単なる禁止の解除又は自由の許容ではなく、積極的に第三者に対抗することのできる権利の設定である。実定法上では、許可、免許、認可などの語が混用されている。

エ 確認行為 特定の法律事実又は法律関係の存否又は正否に関し、疑い又は争いがある場合に行政庁が公の権威でこれを確認し、公に宣言する行政行為をいう。例えば、税額の更正又は決定、公有水面埋立工事のしゅん功の認可、土地収用における事業の認定、道路、河川等の区域の認定、恩給権の決定、市町村境界の裁定、当選人の決定などである。

確認行為は、既存の法律事実又は法律関係を公の権威で確定する判断の表示であり、新たな法律効果を形成する行為ではない。確認の効果として、自由に変更することができない確定力を生ずる。

実定法上では、認可、認定、裁定、決定等の語が混用されている。

オ 公証行為 特定の争いのない法律事実又は法律関係の存在を公に証明する行為をいう。例えば、選挙人名簿・不動産登記簿その他の公簿への登録・登記・登載、恩給証書その他の証書の発行、各種免許証の発行などである。

公証行為は、反証によってのみ覆すことができる。公の証拠力を生じる公の認識の表示である点で公の判断の表示である確認行為と異なる。

(2) 付款

行政庁は、法令が付款を付けることを認めた場合及び法令が行政庁に裁量権の行使を許容する場合に、行政目的の達成上必要な最小限度において、付款を付けることができる。

付款とは、学問上の用語であって、法律行為的行政行為(許可、認可、特許等)の効果を制限するために、意思表示の主たる内容に付加した従たる意思表示をいう。付款は、実定法上ではその意味を表すために「条件」「条件又は期限」という用語で用いられることが多い。付款には、次のような種類がある。

ア 条件 行政行為の効力の発生又は消滅を、将来発生することが不確実な事実の発生にかからせる意思表示をいう。条件成就により、行政行為の効力が生ずる場合(停止条件)とその効力を失う場合(解除条件)とがある。

イ 期限 行政行為の効力の発生又は消滅を、将来発生することが確実な事実にかからせる意思表示をいう。到来する時期の確実なもの(確定期限)と到来する時期の不確実なもの(不確定期限)とがある。期限の到来によって効力を生ずる(始期)ことがあり、期限の到来によって効力を失う(終期)ことがある。

ウ 取消権の保留 行政行為の主たる意思表示に付随して、公益上必要がある場合その他特定の場合に、当該行政行為を取り消すことができる権利を保留する意思表示をいう。

エ 負担 行政行為の主たる意思表示に付随して、相手方に一定の義務を課する意思表示をいう。例えば、道路・河川の使用を許可するに当たり、その付款として、占用料・使用料の納付を命じ、又はその使用方法について特別の制限を加えたりするのがこれに当たる。

負担は、期限、条件又は取消権保留と異なり、当然には行政行為の効力とは関係がなく、行政行為に伴い相手方に生じる法定義務以外の義務の加重である。

(3) 教示

行政庁は、指令の内容が特定事項の命令(禁止)、付款のある許認可、不許可、不認可、許認可の取消し等行政行為の相手方に不利益を与えるものである場合には、当該処分について行政不服審査法その他の法令に基づく審査請求又は異議申立て等不服申立てをすることができる旨の教示をしなければならない。この教示は、指令書の本文のなお書き又は末尾に付記として、当該処分について不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を記載して行うことが適当である。

(1) 許可、認可等をする場合

基本的な書式

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注1 指令番号は、「指令」の次に各課の文書件名簿による番号を続けて書く。例えば、総務課の場合、「指令佐総第○○号」とする。

2 指令の相手方の表示については、相手方が法人の場合に代表者名を記載しない。法人格を有しない団体の場合は、団体名と代表者名を記載する。また、相手方の住所を記載するのが通常である。その場合、相手方が、個人(法人格を有しない場合の代表者を含む。)の場合はその住所、法人の場合は主たる事務所の所在地を記載する。なお、敬称を書かないことに注意する。

(2) 許可、認可等をしない場合

基本的な書式

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注 許可、認可等をしない場合など相手方に不利益な処分をするときは、必ずその理由を付記するとともに、不服申立てに関する教示をすること。

(3) 許可、認可等を取り消す場合

基本的な書式

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(4) 命令をする場合

基本的な書式

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第4節 公示文書

1 告示

公の機関が、一定の事項を一般に知らせることを総称して「公示」という。公示の形式として、告示と公告とがある。したがって、法令等において「公示しなければならない」と規定されている場合、公示するための形式としては告示又は公告のいずれかの形式が用いられることとなり、「佐伯市公示」という形式があるわけではない。

告示、公告いずれも、総務課に備え置く告示公告件名簿に必要事項を記載し、本市の掲示場に掲示することによって行う。

告示とは、行政機関が法令等の規定又は権限に基づいて処分し、又は決定した事項その他一定の行政上の措置等を公示する場合の形式である。告示は、一定事項を住民等に知らせる手段であることを本質とするから、原則として、法規的性質を持たず住民等を直接拘束する力を有しない。

告示と公告の区別については、従来から実質的な見地に立って一定の使い分けがなされるよう説明されているが、個々具体的な場合における両者の区分は、必ずしも明確なものとは言い難い。本市においては告示は公告に比べて重要度、必要度等の高いものについて用いることを基本とし、具体的には、次のような場合には告示の形式によることとする。

(1) 法令等で「告示する」又は「公示する」と規定されている場合(「公告する」と規定されている場合は、公告による。)

(2) 法令等で「告示する」、「公示する」又は「公告する」という文言が使用されていない場合において、次のいずれかに該当する場合

ア 会議等を招集する場合

イ 法令等の授権により、その内容を補充する具体的な定めをする場合

ウ 行政機関がある者に対して一定の行政処分等をしたことを不特定多数の者に知らせる場合

エ 不特定多数の住民を相手として行政処分を行う場合

オ 実質的に不特定多数の住民に関係することになる一般的な定め(要綱、規程、要領等)で公示すべきものを定立する場合

(3) その他行政上の一定の措置等の公表で、告示によることが適当と認められるもの

1―1 規程形式をとる場合

(1) 制定する場合

基本的な書式

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注1 告示の作成要領は、条例に準ずる。

2 告示には、条例又は規則のように公布文を付せず、制定文(告示文)が付せられる。

3 附則等において、告示自体を指し示すときは、「この告示は」とし、「この要綱(規程)は」などとしない。

(2) 一部を改正する場合

基本的な書式

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注 改正の方法は、条例に準ずる。

(3) 廃止する場合

基本的な書式

(廃止する告示が一つである場合)

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(廃止する告示が二つ以上である場合)

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注 告示を廃止するには、他の告示の附則で廃止する場合もあり、その場合の例は、(1)制定する場合の書式を参照すること。

1―2 規程形式をとらない場合

(1) 制定する場合

基本的な書式

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注1 題名を必ず付ける。

2 法令等の規定に基づく告示には、その根拠を明示する。この場合、告示の内容となる行為をすることについての根拠規定と、告示をすることそれ自体の根拠規定をともに示すものとする。

(2) 一部を改正する場合

基本的な書式

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注1 題名を必ず付ける。

2 告示文中には、「○○○年佐伯市告示第○号(○○○○○○○○について)」として、改正される告示の告示番号及び題名を引用する。

(3) 廃止する場合

基本的な書式

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2 公告

公告は、行政機関が一定の事実を公表して一般に周知させるための形式である。

公告は、おおむね次の場合に用いる。

(1) 法令等で「公告する」と規定されている場合

(2) 所在不明者に対する通知手段とする場合

(3) 不特定又は多人数に権限行使又は異議申立て等の機会を与えようとする場合(試験の実施、書類の縦覧、公聴会・聴聞会の開催等を知らせる場合など)

(4) その他一定事項を一般に知らせる場合

(1) 制定する場合

基本的な書式

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注1 必ず題名を付ける。

2 公告は、単なる公示手段にすぎないから、施行や適用に関する事項(施行日や適用日など)については規定する必要はない。

3 その他公告の制定については、規程形式をとらない告示の例による。

4 上記書式のいずれによるかは、公告内容の量等に応じて適宜選択する。

(2) 一部を改正する場合・廃止する場合

基本的な書式

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注1 公告の一部改正又は廃止の形式は、規程形式をとらない告示の一部改正又は廃止とほぼ同様である。

2 公告の一部改正又は廃止の場合、公告番号と題名により一部改正又は廃止しようとする公告を引用し、一部改正又は廃止の旨を示す。

第5節 議案文書

1 議案

議案とは、議会の議決すべき事件について、議会の意思決定を求める文書のことをいう。

議会の議決すべき事件は、通常、次の3種類に大別されている。

(1) 行政主体である地方公共団体としての意思を決定するもの

条例の制定・改廃など

(2) 地方公共団体の機関の一つである議会の内部的な意思を決定するもの

議会の会議規則の制定、議員の懲罰の議決など

(3) 長の事務執行の前提要件としての議会の意思を決定するもの

副市長の選任の同意、工事請負契約の締結・変更の同意、財産の取得・処分の同意など

議案の末尾には、認定を求める案、承認を求める案及び単なる報告事項を除き、必ず理由を付する。理由としては、その議案を提出するに至った実質的な理由を簡明に書く。

(1) 条例の制定

基本的な書式

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(2) 条例の全部改正(条例の題名が変わらない場合)

基本的な書式

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(3) 条例の全部改正(条例の題名が変わる場合)

基本的な書式

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(4) 条例の一部改正

基本的な書式

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(5) 2条例の一部改正

基本的な書式

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(6) 条例の廃止

基本的な書式

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(7) 工事請負契約の締結

基本的な書式

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注 議案には、位置図及び工事の概要を示す図面(平面図、立面図など)を添付する。

(8) 工事請負契約の変更

基本的な書式

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(9) 財産の取得又は処分

基本的な書式

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注 議案には、位置図、字図等を添付する。

(10) 財産の無償譲渡

基本的な書式

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(11) 権利の放棄

基本的な書式

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(12) 訴えの提起

基本的な書式

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注 「訴えの趣旨」には、訴訟においていかなる内容の判決を求めるか簡潔に書く。

(13) 損害賠償事件の和解と額の決定

基本的な書式

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(14) 区域内に新たに生じた土地の確認及び字の区域の変更

基本的な書式(公有水面埋立て)

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注 議案には、①しゅん功認可書の写し、②位置図、③字図及び埋立区域図をこの順に添付する。

(15) 諮問案

基本的な書式(人権擁護委員候補者の推薦)

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注 別紙略歴表を添付する。

(16) 専決処分の報告及び承認

基本的な書式(専決処分の報告及び承認)

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注1 専決処分とは、議会が成立しない場合、議会を招集する時間的余裕がない場合等にその議決すべき事件を長限りで処分するものである。この場合において、長は次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならないものとされており、本書式はこの場合に使用するものである。

2 専決処分は、条例案以外のものも対象になり、同様に専決処分書を添付することとなる。

3 本来、議決事件は、当然議会の議決を必要とするものであり、専決処分を多用することは、避けなければならない。

(17) 単なる報告事項

基本的な書式(議会の委任による専決処分)

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(出資法人等の経営状況)

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注 別冊として出資法人等の経営状況の報告書を添付する。

第6節 契約文書

1 契約書

契約は、一定の法律効果の発生を目的として、原則として、申込みとこれに対する承諾という相対立する(方向を異にする)二つ以上の意思表示が合致することによって成立する法律行為である。この相対立する二つ以上の意思表示の合致の内容を表示し、証明するために取り交わす文書が契約書である。

地方自治法上、財務の範囲として規定されている契約は、私法上の契約である。私法上の契約には、売買・交換・消費貸借・使用貸借・賃貸借・雇用・請負・委任・寄託・組合・終身定期金・和解・贈与という民法に定めのある基本的な契約などがある。

契約担当者は、契約を締結しようとするときは、原則として契約書を作成しなければならないことになっており、契約書には、次の事項(契約の性質又は目的により必要のない事項を除く。)を記載することになっている佐伯市契約規則第3条参照)

(1) 契約の目的

(2) 契約金額

(3) 履行期限又は履行期間

(4) 契約保証金

(5) 契約履行の場所

(6) 契約代金の支払又は受領の時期及び方法

(7) 履行遅滞その他債務不履行の場合の遅延利息、違約金その他の損害金

(8) 前金払及び部分払についての特約

(9) 監督及び検査

(10) 危険負担

(11) 工事又は給付の目的物に瑕疵があった場合における担保責任に関する事項

(12) 契約に関する紛争の解決方法

(13) 前各号に掲げるもののほか、必要な事項

基本的な書式

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注1 本市において現実に作成されている契約書の中には、条と条の間、文章と文章の間などに無用の空白をとっている例がかなりあるが、改ざん等の余地を残すことになるので、上記書式において「1行空ける」とされている箇所以外では行を空けないようにする。

2 契約当事者の表示形式

(1) 本市の表示

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(2) 相手方の表示

ア 自然人

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イ 法人(例えば株式会社の場合)

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法人(自治会(区)等の場合)

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(PTAや同窓会等の場合)

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ウ 代理人

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なお、代理人を相手方とする場合には、その代理権の存在を確認するため、本人から本市宛てに書かれた「代理人選任届」及び印鑑証明書を提出させることが必要である。

(1) 土地贈与契約書(無償譲受け用)

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(2) 土地売買契約書(代金一括払いによる売渡し用)

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(3) 土地売買契約書(用途を指定した売渡し用)

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(4) 土地売買契約書(土地購入用)

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(5) 土地交換契約書

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(6) 建物売買契約書(解体等を条件とした売渡し用)

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(7) 物品売買契約書(物品の購入用)

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(8) 土地賃貸借契約書(用途指定有償貸付け用)

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(9) 土地賃貸借契約書(借受け用)

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(10) 土地使用貸借契約書(借受け用)

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(11) 委託契約書(業務委託用)

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(12) 変更契約書

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2 請書

請書は、契約書の作成を省略する場合において、契約の完全な履行を確保するために、契約の内容とされる主要な事項について契約書に代えて、契約の相手方から、契約履行の誓約として徴する文書をいう。

(1) 請書(物品納入等)

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(2) 請書(工事請負等)

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3 協定書・覚書等

各種契約を締結する際に、協定書、覚書、念書又は誓約書と呼ばれる書面を作成することがある。財務会計法規上、特別の定めはないが、これらの書類も合意を証する書面であり、契約書又は請書類似のものである。したがって、これらの書面は、合意したことを証するという点において、契約書又は請書と効力上何らの差異はない。その意味で、協定書、覚書等の題名の文書の濫用は努めて避けることとし、できるだけ正規の契約書を作成することが望ましい。

なお、これらの書面を作成する場合においても、その内容が新たな権利義務の発生を内容とするようなものであるときは、契約書を作成する場合におけると同様に、細心の注意を払い、できるだけ詳しく、正確かつ明瞭に記載して、不測の義務負担を予防するとともに、疑義が生じないようにしなければならない。

協定書、覚書、念書、誓約書は、おおむね次のような場合に作成する。

(1) 協定書は、多くの場合、当事者が相互に直接権利義務を負担するのではなく、ある政策その他の方針を約束する場合に取り交わされるものであり、また直接権利義務を負担するものであっても、細部にわたって具体的な権利義務を定めないで、大局的な立場において取決めをする場合に作成される。

(2) 覚書には、①正規の契約書を作成するに先立って、取りあえず原則的な事項若しくは大綱を取り決める場合、②既存の契約について附属的な事項を取り決める場合、③純然たる契約である場合、又は④法的拘束力のない努力目標の宣明である場合などがあるが、通常は、①又は②の場合が多いとされている。

(3) 念書及び誓約書は、当事者双方が平等に権利義務を確認し、その履行を約束するのではなく、一方の当事者が相手方に対してあることを確認し、又は義務を負担することを明らかにする場合に作成される。したがって、念書及び誓約書は、一般に、義務を負担する者がこれに署名(記名)・押印して相手方に差し入れる形式をとる。この点が協定書や覚書と特に異なる点である。

(1) 協定書

基本的な書式

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(2) 協定書(指定管理者との基本協定書)

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(3) 協定書(指定管理者との年度協定書)

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(4) 覚書

基本的な書式

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第7節 その他の文書

1 書簡文

書簡文とは、通常、普通の手紙文の表現方法を用いる文書のことをいい、公務において通常用いられている書簡文は、案内状、礼状、挨拶状、依頼状、照会状等が多い。

書簡文では、できるだけ平易で誠意のこもった話し言葉を用い、形式ばらずに書くようにしなければならない。

また、出張したり、依頼した要件が落着したときなどには、時期を失せず、速やかに先方へ礼状を出すよう心掛けなければならない。

書簡用語

(1) 書き出し(起語)

(往復) 拝啓、謹啓、恭啓、前略、冠省、奉啓

(返信) 拝復、謹復、復啓、謹答、拝読、前略

(2) 結び(結語)

敬具、敬白、謹言、謹白、草々、早々、不一、不備、拝具、失敬

(3) 書き出しと結びとの応答

拝啓    ― 敬具・敬白

謹啓・恭啓 ― 謹言・謹白

前略・冠省 ― 早々・草々・不一

(4) 時候の挨拶

時候の挨拶「早春の候」や「ますます御清栄のこととお喜び申し上げます。」のような文言は、儀礼的な扱いをするものには必ず記載するが、それ以外の文書には使用しないこともある。

記載しない場合は、書き出しの言葉と結びの言葉も記載しない。

また、記載しない場合は、文の出だしに「いつも市政に御理解と御協力をいただき誠にありがとうございます。」のような表現を記載することが多い。

1月  初春、新春、年頭、寒さ耐え難い、大寒の候

2月  春寒、晩冬、残冬、残雪の候、残寒厳しい折から

3月  早春、浅春、軽暖、盛春、春暖の候、軽暖の候、春寒やや緩み

4月  春暖、陽春の候、若草もえる季節

5月  初夏の候、立夏の候、向暑の候、暮春の候、新緑若葉にはえて、新緑の候

6月  初夏、梅雨の候、向暑のみぎり、暑気にわかに加わり

7月  盛夏、炎暑、酷暑、暑さ厳しく、大暑(酷暑、盛暑)の候

8月  残暑、晩夏、早涼、残暑の節

9月  初秋、新秋、涼の秋、新涼、新秋の候、新涼の候

10月  仲秋、秋涼、秋長、秋涼の候、秋晴の候、スポーツの秋

11月  晩秋、暮秋、深冷、季秋、向寒のみぎり、霜寒の候、暮秋の候

12月  初冬、寒冷、歳末寒冷の候、年末御多忙の折りから

(5) 末文(依頼)

~いただきたく(賜りますよう)お願い申し上げます。

次の要領で調査してくださいますようお願いします。

甚だ恐縮ですが、○○○をお送りくださいますようお願いします。

基本的な書式

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注1 文書記号、文書番号は付けない。発信年月日、宛名及び発信者名は、本文(標題)の前に置く。

2 標題は、場合によっては付けない。

3 書き出しと結びは、「書簡用語」を参照のこと。

4 時候の挨拶の部分は、場合によっては省いてよい。

5 本文の終わりをいきなり敬具等で結びにくいときは、末文を書く。

(1) 案内状

(会合開催についての案内状)

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(2) 礼状

(職員出張に対する礼状)

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(教示等に対する礼状)

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(3) 依頼状

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(4) 委嘱状

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(5) 挨拶状

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第2章 公文書の用字・用語等

第1節 用字

用字とは、文章に用いられる文字(漢字、仮名、数字等)及び符号(区切り符号、繰り返し符号等)をいい、公用文で用いる用字の概要は、次のとおりである。

1 漢字

現代の国語を書き表すための漢字使用の目安として「常用漢字表」(平成22年内閣告示第2号)が告示されたことに伴い、国の行政機関が作成する公用文における漢字の使用等について「公用文における漢字使用等について」(平成22年内閣訓令第1号)が、法令における漢字使用等について「法令における漢字使用等について」(平成22年内閣法制局長官決定)が定められている。

(1) 常用漢字表の使用

公用文における漢字使用は、常用漢字表の本表及び付表(表の見方及び使い方を含む。)によるものとする。なお、字体については通用字体を用いるものとする。

固有名詞(地名、人名等漢字で表すことに決まっているもの)、専門用語の漢字は、常用漢字以外でも用いて差し支えない。ただし、読みにくいものは、振り仮名を付け、差し支えない範囲内で、仮名書き又は簡易字体を用いることができる。

常用漢字表の本表に掲げる音訓によって語を書き表すに当たっては、次の事項に留意する。

ア 次のような代名詞は、原則として、漢字で書く。

例  俺 彼 誰 何 僕 私 我々

イ 次のような副詞及び連体詞は、原則として、漢字で書く。

(副詞)

余り 至って 大いに 恐らく 概して 必ず 必ずしも

辛うじて 極めて 殊に 更に 実に 少なくとも 少し

既に 全て 切に 大して 絶えず 互いに 直ちに

例えば 次いで 努めて 常に 特に 突然 初めて 

果たして甚だ 再び 全く 無論 最も 専ら 僅か 

割に

(連体詞)

明くる 大きな 来る 去る 小さな 我が(国)

ただし、次のような副詞は、原則として、仮名で書く。

例  かなり ふと やはり よほど

ウ 次の接頭語は、その接頭語が付く語を漢字で書く場合は、原則として、漢字で書き、その接頭語が付く語を仮名で書く場合は、原則として、仮名で書く。

例  案内(御+案内) 挨拶(御+挨拶) ごもっとも(ご+もっとも)

エ 次のような接尾語は、原則として、仮名で書く。

例  げ(惜しもなく) ども(私ども ぶる(偉ぶる み(弱 め(少な

オ 次のような接続詞は、原則として、仮名で書く。

例  おって かつ したがって ただし ついては ところが ところで また ゆえに

ただし、次の4語は、原則として漢字で書く。

及び 並びに 又は 若しくは

カ 助動詞及び助詞は、仮名で書く。

例  ない(現地には、行かない。) ようだ(それ以外に方法がないようだ。) ぐらい(二十歳ぐらいの人) だけ(調査しただけである。) ほど(三日ほど経過した。)

キ 次のような語句を、( )の中に示した例のように用いるときは、原則として、仮名で書く。

例   ある(その点に問題がある。) いる(ここに関係者がいる。)こと(許可しないことがある。) できる(だれでも利用ができる。) とおり(次のとおりである。) とき(事故のときは連絡する。) ところ(現在のところ差し支えない。) とも(説明するとともに意見を聞く。) ない(欠点がない。)なる(合計すると1万円になる。) ほか(そのほか…、特別の場合を除くほか…) もの(正しいものと認める。) ゆえ(一部の反対のゆえにはかどらない。) わけ(賛成するわけにはいかない。) …かもしれない(間違いかもしれない。) …てあげる(図書を貸してあげる。) …ていく(負担が増えていく。)…ていただく(報告していただく。) …ておく(通知しておく。) …てください(問題点を話してください。) …てくる(寒くなってくる。) …てしまう(書いてしまう。) …てみる(見てみる。) …てよい(連絡してよい。) …にすぎない(調査だけにすぎない。) …について(これについて考慮する。)

(2) 常用漢字表で書き表せないものの書換え等

常用漢字表で書き表せないものは、次の標準によって書換え、言換えをする。

ア 仮名書きにする。

(ア) 佃煮→つくだ煮  艀→はしけ  看做す→みなす

(イ) 漢語でも、漢字を外しても意味のとおる使い慣れたものは、そのまま仮名書きする。

例  でんぷん  あっせん

(ウ) 他に良い言換えがなく、又は言換えをしては不都合なものは、常用漢字表に外れた漢字だけを仮名書きにする。

例  改竄→改ざん  口腔→口こう

イ 常用漢字表中の、音が同じで、意味の似た漢字で書き換える。

例  車輌→車両  煽動→扇動  碇泊→停泊  など

ウ 同じ意味の漢語で言い換える。

例  改悛→改心  罹災→災害  など

エ 漢字を易しい言葉で言い換える。

例  隠蔽する→隠す  庇護する→かばう  酩酊する→酔う  など

2 仮名

(1) 仮名の使用

仮名は、原則として平仮名を用い、片仮名は、次のような場合に用いる。

ア 外国の地名、人名及び外来語

例  イタリア  スウェーデン  フランス  ロンドン  エジソン  ヴィクトリア

ガス  ガラス  ソーダ  ビール  ボート  マージャン

ただし、外来語でも「かるた」「さらさ」「たばこ」などのように、外来語の意識の薄くなっているものは、平仮名で書いてよい。

イ 特に強調する必要のある言葉

例  ムリ・ムラ・ムダをなくそう。ムダにも費用が掛かります。

ゴミ戦争始まる!クサビを打ち込む。県民のナマの声を聴く。

入場券をハッキリ見せてください。

ウ 擬声語及び擬態語、俗字、当て字の類の名詞

例  車が、ゴーゴーと音をたてて通り過ぎる(擬声語)

高波が、ドッと押し寄せる。(擬態語)

メチャクチャ  デタラメ

エ 計量の単位

例  キロメートル  平方メートル  リットル

(2) 仮名遣い

公用文における仮名遣いは、「現代仮名遣い」(昭和61年内閣告示第1号)による。この「現代仮名遣い」は、現代語を仮名で書き表す場合の準則を示したもので、主として現代文のうち口語体のものに適用される。

(3) 送り仮名

送り仮名とは、漢字と仮名を交ぜて文書を書く場合、漢字で書いた語の読み方を明らかにするために、漢字の後に添えて書く仮名の部分をいう。

具体的な取扱いを整理すると以下のとおりとなる。

単独の語 (漢字の音又は訓を単独に用いて、漢字1字で書き表す語をいう。)

1 活用のある語(動詞・形容詞・形容動詞をいう。)

通則1 (活用語尾を送る語に関するもの)

本則 活用のある語(通則2を適用する語を除く。)は、活用語尾を送る。

例  表 著 憤 承 行 書 断 賜 実 催 現れる 生きる 陥れる 考える 助ける 荒 潔 賢 濃 主

例外(1) 語幹が「し」で終わる形容詞は、「し」から送る。

例  著い 惜い 悔い 恋い 珍

(2) 活用語尾の前に「か」、「やか」、「らか」を含む形容動詞は、その音節から送る。

例 暖だ 細だ 静

やかだ 健やかだ 和やか

らかだ 平らかだ 滑らかだ 柔らか

(3) 次の語は、次に示すように送る。

む 味う 哀む 慈む 教る 脅す 関る 食う 異る 逆う 捕る 群る 和ぐ 揺

い 危い 危い 大い 少い 小い 冷い 平

だ 同だ 盛だ 平だ 懇だ 惨

だ 幸だ 幸だ 巧

通則2 (派生・対応の関係を考慮して、活用語尾の前の部分から送る語に関するもの)

本則 活用語尾以外の部分に他の語を含む語は、含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。(含まれている語を〔 〕の中に示す。)

(1) 動詞の活用形又はそれに準ずるものを含むもの

動かす〔動く〕 照らす〔照る〕

語らう〔語る〕 計らう〔計る〕 向かう〔向く〕

浮かぶ〔浮く〕

生まれる〔生む〕 押さえる〔押す〕 捕らえる〔捕る〕

勇ましい〔勇む〕 輝かしい〔輝く〕 喜ばしい〔喜ぶ〕

晴れやかだ〔晴れる〕

及ぼす〔及ぶ〕 積もる〔積む〕 聞こえる〔聞く〕

頼もしい〔頼む〕

起こる〔起きる〕 落とす〔落ちる〕

暮らす〔暮れる〕 冷やす〔冷える〕

当たる〔当てる〕 終わる〔終える〕 変わる〔変える〕

集まる〔集める〕 定まる〔定める〕 連なる〔連ねる〕

交わる〔交える〕

混ざる・混じる〔混ぜる〕

恐ろしい〔恐れる〕

(2) 形容詞・形容動詞の語幹を含むもの

んずる〔重い〕 やぐ〔若い〕

怪しむ〔怪しい〕 悲しむ〔悲しい〕 苦しがる〔苦しい〕

確かめる〔確かだ〕

たい〔重い〕 らしい〔憎い〕 めかしい〔古い〕

細かい〔細かだ〕 柔らかい〔柔らかだ〕

らかだ〔清い〕 らかだ〔高い〕 寂しげだ〔寂しい〕

(3) 名詞を含むもの

ばむ〔汗〕 んずる〔先〕 めく〔春〕

らしい〔男〕 後ろめたい〔後ろ〕

通則3 (名詞であって、送り仮名を付けない語に関するもの)

本則 名詞(通則4を適用する語を除く。)は、送り仮名を付けない。

例 月 鳥 花 山 男 女 彼 何

例外(1) 次の語は、最後の音節を送る。

 哀 勢 幾 後 傍 幸 幸 全 互 便 半 情 斜 独 誉 自 災

(2) 数をかぞえる「つ」を含む名詞は、その「つ」を送る。

例 一 二 三 幾

通則4 (活用のある語から転じた名詞であって、もとの語の送り仮名の付け方によって送る語に関するもの)

本則 活用のある語から転じた名詞及び活用のある語に「さ」、「み」、「げ」などの接尾語が付いて名詞になったものは、もとの語の送り仮名の付け方によって送る。

(1) 活用のある語から転じたもの

 仰 恐 薫 曇 調 届 願 晴

たり 代わり 向かい

 答 問 祭 群

 愁 憂 香 極 初

 遠

(2) 「さ」、「み」、「げ」などの接尾語が付いたもの

暑さ 大さ 正さ 確

み 重み 憎

〔備考〕 表に記入したり記号的に用いたりする場合には、次の例に示すように、原則として、( )の中の送り仮名を省く。

例 晴(れ)  曇(り)  問(い)  答(え)  終(わり)

通則5 (副詞・連体詞・接続詞に関するもの)

本則 副詞・連体詞・接続詞は、最後の音節を送る。

例 必 更 少 既 再 全 最 来 去 及

例外(1) 次の語は、次に示すように送る。

くる 大いに 直ちに 並びに 若しくは

(2) 次のように、他の語を含む語は、含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。

例 併せて〔併せる〕 至って〔至る〕 恐らく〔恐れる〕従って〔従う〕 絶えず〔絶える〕 例えば〔例える〕努めて〔努める〕 辛うじて〔辛い〕 少なくとも〔少ない〕 互いに〔互い〕 必ずしも〔必ず〕

複合の語 (漢字の訓と訓、音と訓などを複合させ、漢字2字以上を用いて書き表す語をいう。)

通則6 (単独の語の送り仮名の付け方による語に関するもの)

本則 複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は、その複合の語を書き表す漢字の、それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。

〔例〕

(1) 活用のある語

書き抜く 流れ込む 申し込む 打ち合わせる 向かい合わせる 長引く 若返る 裏切る 旅立つ 聞き苦しい 薄暗い 草深い 心細い 待ち遠しい 軽々しい 若々しい 女々しい 気軽だ 望み薄だ

(2) 活用のない語

石橋 竹馬 山津波 後ろ姿 斜め左 花便り 独り言卸商 水煙 目印 田植え 封切り 物知り 落書き 雨上がり 墓参り 日当たり 夜明かし 先駆け 巣立ち 手渡し 入り江 飛び火 教え子 合わせ鏡 生き物 落ち葉 寒空 深情け 愚か者 行き帰り 伸び縮み 乗り降り 抜け駆け 作り笑い 暮らし向き 歩み寄り 移り変わり 長生き 早起き 苦し紛れ 大写し 粘り強さ 有り難み 待ち遠しさ 乳飲み子 無理強い 立ち居振る舞い 次々 常々 近々 深々 休み休み 行く行く

ただし、読み間違えるおそれのない次の語は、括弧の中に示したように送り仮名を省く。

明け渡し(明渡し)      預かり金(預り金)

言い渡し(言渡し)      入れ替え(入替え)

植え付け(植付け)      魚釣り用具(魚釣用具)

受け入れ(受入れ)      受け皿(受皿)

受け持ち(受持ち)      受け渡し(受渡し)

渦巻き(渦巻)        打ち合わせ(打合せ)

打ち合わせ会(打合せ会)   打ち切り(打切り)

内払い(内払)        移し替え(移替え)

埋め立て(埋立て)      売り上げ(売上げ)

売り惜しみ(売惜しみ)    売り出し(売出し)

売り場(売場)        売り払い(売払い)

売り渡し(売渡し)      売れ行き(売行き)

縁組み(縁組)        追い越し(追越し)

置き場(置場)        贈り物(贈物)

帯留め(帯留)        折り詰め(折詰)

買い上げ(買上げ)      買い入れ(買入れ)

買い受け(買受け)      買い換え(買換え)

買い占め(買占め)      買い取り(買取り)

買い戻し(買戻し)      買い物(買物)

書き換え(書換え)      格付け(格付)

掛け金(掛金)        貸し切り(貸切り)

貸し金(貸金)        貸し越し(貸越し)

貸し倒れ(貸倒れ)      貸し出し(貸出し)

貸し付け(貸付け)      借り入れ(借入れ)

借り受け(借受け)      借り換え(借換え)

刈り取り(刈取り)      缶切り(缶切)

期限付き(期限付)      切り上げ(切上げ)

切り替え(切替え)      切り下げ(切下げ)

切り捨て(切捨て)      切り土(切土)

切り取り(切取り)      切り離し(切離し)

靴下留め(靴下留)      組み合わせ(組合せ)

組み入れ(組入れ)      組み替え(組替え)

組み立て(組立て)      くみ取り便所(くみ取便所)

繰り上げ(繰上げ)      繰り入れ(繰入れ)

繰り替え(繰替え)      繰り越し(繰越し)

繰り下げ(繰下げ)      繰り延べ(繰延べ)

繰り戻し(繰戻し)      差し押さえ(差押え)

差し止め(差止め)      差し引き(差引き)

差し戻し(差戻し)      砂糖漬け(砂糖漬)

下請け(下請)        締め切り(締切り)

条件付き(条件付)      仕分け(仕分)

据え置き(据置き)      据え付け(据付け)

捨て場(捨場)        座り込み(座込み)

栓抜き(栓抜)        備え置き(備置き)

備え付け(備付け)      染め物(染物)

田植え(田植)        立ち会い(立会い)

立ち入り(立入り)      立て替え(立替え)

立て札(立札)        月掛け(月掛)

付き添い(付添い)      月払い(月払)

積み卸し(積卸し)      積み替え(積替え)

積み込み(積込み)      積み出し(積出し)

積み立て(積立て)      積み付け(積付け)

釣り合い(釣合い)      釣り鐘(釣鐘)

釣り銭(釣銭)        釣り針(釣針)

手続き(手続)        問い合わせ(問合せ)

届け出(届出)        取り上げ(取上げ)

取り扱い(取扱い)      取り卸し(取卸し)

取り替え(取替え)      取り決め(取決め)

取り崩し(取崩し)      取り消し(取消し)

取り壊し(取壊し)      取り下げ(取下げ)

取り締り(取締り)      取り調べ(取調べ)

取り立て(取立て)      取り次ぎ(取次ぎ)

取り付け(取付け)      取り戻し(取戻し)

投げ売り(投売り)      抜き取り(抜取り)

飲み物(飲物)        乗り換え(乗換え)

乗り組み(乗組み)      話し合い(話合い)

払い込み(払込み)      払い下げ(払下げ)

払い出し(払出し)      払い戻し(払戻し)

払い渡し(払渡し)      払い渡し済み(払渡済み)

貼り付け(貼付け)      引き上げ(引上げ)

引き揚げ(引揚げ)      引き受け(引受け)

引き起こし(引起し)     引き換え(引換え)

引き込み(引込み)      引き下げ(引下げ)

引き締め(引締め)      引き継ぎ(引継ぎ)

引き取り(引取り)      引き渡し(引渡し)

日雇い(日雇)        歩留まり(歩留り)

船着き場(船着場)      不払い(不払)

賦払い(賦払)        振り出し(振出し)

前払い(前払)        巻き付け(巻付け)

巻き取り(巻取り)      見合わせ(見合せ)

見積もり(見積り)      見習い(見習)

未払い(未払)        申し合わせ(申合せ)

申し合わせ事項(申合せ事項) 申し入れ(申入れ)

申し込み(申込み)      申し立て(申立て)

申し出(申出)        持ち家(持家)

持ち込み(持込み)      持ち分(持分)

元請け(元請)        戻し入れ(戻入れ)

催し物(催物)        盛り土(盛土)

焼き付け(焼付け)      雇い入れ(雇入れ)

雇い主(雇主)        譲り受け(譲受け)

譲り渡し(譲渡し)      呼び出し(呼出し)

読み替え(読替え)      割り当て(割当て)

割り増し(割増し)      割り戻し(割戻し)

通則7 (慣用に従って送り仮名を付けない語に関するもの)

複合の語のうち次のような名詞は、慣用に従って送り仮名を付けない。

〔例〕

合図

合服

合間

預入金

編上靴

植木

(進退)

浮袋

浮世絵

受入額

受入先

受入年月日

請負

受付

受付係

受取

受取人

受払金

打切補償

埋立区域

埋立事業

埋立地

裏書

売上(高)

売掛金

売出発行

売手

売主

売値

売渡価格

売渡先

絵巻物

襟巻

沖合

置物

奥書

奥付

押売

押出機

覚書

(博多)

折返線

織元

織物

卸売

買上品

買受人

買掛金

外貨建債権

概算払

買手

買主

買値

書付

書留

過誤払

貸方

貸越金

貸室

貸席

貸倒引当金

貸出金

貸出票

貸付(金)

貸主

貸船

貸本

貸間

貸家

箇条書

貸渡業

肩書

借入(金)

借受人

借方

借越金

刈取機

借主

仮渡金

缶詰

気付

切手

切符

切替組合員

切替日

くじ引

組合

組入金

組立工

倉敷料

繰上償還

繰入金

繰入限度額

繰入率

繰替金

繰越(金)

繰延資産

消印

月賦払

現金払

小売

小売(商)

小切手

木立

小包

子守

献立

先取特権

作付面積

挿絵

差押(命令)

座敷

指図

差出人

差引勘定

差引簿

刺身

試合

仕上機械

仕上工

仕入価格

仕掛花火

仕掛品

敷網

敷居

敷石

敷金

敷地

敷布

敷物

軸受

下請工事

仕出屋

仕立券

仕立物

仕立屋

質入証券

支払

支払元受高

字引

仕向地

事務取扱

事務引継

締切日

所得割

新株買付契約書

据置(期間)

(支出)(額)

関取

備付品

(型絵)

ただし書

立会演説

立会人

立入検査

立場

竜巻

立替金

立替払

建具

建坪

建値

建前

建物

棚卸資産

(条件)(採用)

月掛貯金

付添人

漬物

積卸施設

積出地

積立(金)

積荷

詰所

釣堀

手当

出入口

出来高払

手付金

手引

手引書

手回品

手持品

灯台守

頭取

(欠席)

留置電報

取扱(所)

取扱(注意)

取入口

取替品

取組

取消処分

(麻薬)取締法

取締役

取立金

取立訴訟

取次(店)

取付工事

取引

取引(所)

取戻請求権

問屋

仲買

仲立業

投売品

並木

縄張

荷扱場

荷受人

荷造機

荷造費

(春慶)

(休暇)

乗合船

乗合旅客

乗換(駅)

乗組(員)

場合

羽織

履物

葉巻

払込(金)

払下品

払出金

払戻金

払戻証書

払渡金

払渡郵便局

番組

番付

控室

引当金

引受(時刻)

引受(人)

引換(券)

(代金)引換

引継事業

引継調書

引取経費

引取税

引渡(人)

日付

引込線

瓶詰

歩合

封切館

福引(券)

船積貨物

踏切

振替

振込金

振出(人)

不渡手形

分割払

(鎌倉)

掘抜井戸

前受金

前貸金

巻上機

巻紙

巻尺

巻物

待合(室)

見返物資

見込額

見込数量

見込納付

水張検査

水引

見積(書)

見取図

見習工

未払勘定

未払年金

見舞品

名義書換

申込(書)

申立人

持込禁止

元売業者

物置

物語

物干場

(備前)

役割

屋敷

雇入契約

雇止手当

夕立

譲受人

湯沸器

呼出符号

読替規定

陸揚地

陸揚量

両替

割合

割当額

割高

割引

割増金

割戻金

割安



付表の語

1 次の語は、次に示すように送る。

浮つく お巡りさん 差し支える 立ち退く 手伝う 最寄り

2 次の語は、送り仮名を付けない。

息吹 桟敷 時雨 築山 名残 雪崩 吹雪 迷子 行方

3 数字

横書きの文書又は数式、表等の中ではアラビア数字を用いるのが原則であるが、縦書きの場合には従来どおり漢数字を用いるのを例とする。

漢数字は、次のような場合に用いる。

固有名詞  例 四国 九州

概数を示す語  例 二、三日 数十日

数量的な感じの薄い語

漢数字を含めて熟語を成している言葉であって、その漢字が一定の数量を表す意味に使われていないもの

例 一般 一部分 四分五裂

慣用的な語

「ひとつ」「ふたつ」などと読む場合

例 一休み 二間続き

4 符  号

(1) 区切り符号

公用文には、主として次の符号が用いられる。

(まる、句点) 、(てん、読点)

表彰状・感謝状・賞状の類及び辞令等には、通常句読点を用いない。

ア 「。」(まる、句点)

「。」は、文章の完結の印として一つの文を完全に言い切ったところに必ず用いる。標語標題その他簡単な語句を掲げる場合や事物の名称だけを列記する場合など、その字句が名詞形で終わるときには用いない。ただし、最後の字句が「こと」や「とき」で終わる場合や更にその後にただし書その他の文章が続く場合には用いる。

例 館内整理日(毎月末日。ただし、その日が他の休館日に当たるときはその前日)

イ 「、」(てん、読点)

「、」は、一つの文の中で、言葉の切れ、続きを明らかにする必要のあるところに用いる。ただし、多く用いすぎて、かえって全体の関係が不明になることのないようにする。「、」を用いるのは、次のような場合である。

(ア) 主語の後。ただし、主語・述語の関係にある簡単な語句が条件の句の中又は文の末にあるときなどには、主語の後でも「、」を用いないでよい。

例 しかし、現在の情勢は一変して、……

(イ) 対等に並列する同種類の語句の間

a 一つの文の中に、述語の語句その他用言を中心とする語句を並列するとき。

例 船舶が滅失し、沈没し、又は国籍を失ったとき。

b 体言又は体言を中心とする語句を並列するとき。

例 委員は、政治、教育、文化、経済、産業等各界における学識経験の……

c 体言を並列する場合、「、」の代わりに「・」(なかてん)を用いることができ、また「、」と「・」とを併せて用いることができる。

例 外国人の人名・地名、外来語及び外国からの……

(ウ) 文の初めに置く接続詞及び副詞の後

例 衆議院議員の任期は、4年とする。ただし、衆議院解散の場合には、……

(エ) 句と句を接続する「かつ」の前後には「、」を用いる。これに対して語と語を接続する「かつ」の前後には用いない。

例 関係者に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

行政の民主的かつ能率的な運営を保証し……

(オ) 名詞を説明するため、「で」又は「であって」を用いて接続させる場合は、その字句が相当長く、かつ、他の目的のための読点と混同を来さない場合には、「で」又は「であって」の次に、「、」を用いるのを原則とする。

例 薬剤師でない医薬品の販売業者であって、薬剤師を使用していない……

(カ) 目的格の助詞(を、に、と)の次には「、」を用いない。ただし、条件句、条件文章が入るときは、目的語の次の条件句又は条件文章の前後には「、」を用いる。

例 建物の位置、構造、設備及び管理を、臨時に、検査する。

(キ) 対句の場合には、対句の接続のみに「、」を用い、対句の中にある主語や並列語には通常「、」を用いず、対句を受ける述語の前にも「、」は用いない。

例 都道府県にあっては内閣総理大臣に、市町村にあっては都道府県知事にそれぞれ報告するものとする。

(ク) 条項の順序を示す記号には、原則として「、」を用いず、その下に1字分空白を置く。ただし、行を変えずに各号を列記するとき、及び本文に続けて読まれるおそれのあるものがあるときは、統一して「、」を用いる。

(2) 見出し符号

項目を細別する必要のあるときは、通常次の順序に従って番号及び記号を用いる。ただし、条例、規則、規程等の場合は別に定めるところによって用い、下記等の場合は「第1」を省いて「1」から用いるのが例である。

第1  1  (1)  ア  (ア)  a  (a)

第2  2  (2)  イ  (イ)  b  (b)

第3  3  (3)  ウ  (ウ)  c  (c)

見出し符号・番号・記号の次には「、」を用いず、1字分を空白とする。

(3) その他の符号

( )(括弧)「「 」」(鍵括弧)

( )は、一つの語句又は文の後に注記を加えるとき、その注記を挟んで用いる。

( )のうちで、更に( )を用いる必要があるときは、〔 〕(袖括弧)を用いる。

「 」は、言葉を定義する場合、他の用語又は文章を引用する場合及び特に必要のある場合に、その用語又は文章を挟んで用いる。

「 」の中で、更に「 」を用いる必要があるときは、『 』(二重鍵)を用いる。引用の原文に「 」が用いてあるものは、原文の「 」を『 』に改める。

第2節 用  語

1 基本的留意事項

用語は、次に掲げる事項に留意して用いる。

特殊な言葉を用いたり、堅苦しい言葉を用いることをやめて、日常一般に使われている易しい言葉を用いる。

例 一環として→一つとして  救援する→救う  懇請する→お願いする  充当する→充てる 善処する→適切な取扱いをする

同音語の統一

次の同音語は、右の語に統一して用いる。

(改定・改訂)→改定  (干渉・関渉)→干渉  (関与・干与・干預)→関与  (規制・規正・規整)→規制  (規律・紀律)→規律(経理・計理)→経理  (交代・更代)→交代  (作成・作製)→作成  (主管者・主幹者)→主管者  (状況・情況)→状況  (侵害・浸害)→侵害  (提示・呈示)→提示、示す  (提出・呈出)→提出  (定年・停年)→定年  (統括・統轄)→統括  (配布・配付)→配布  (破棄・破毀)→破棄  (表示・標示)→表示  (総括・総轄)→総括  (和解・和諧)→和解

意味の似た言葉の統一

次の意味の似た言葉は、右の語に統一して用いる。

(次の・左の)→次の  (正当な理由・正当な事由)→正当な理由

(趣旨・旨趣・趣意)→趣旨

法令における用字及び用語

法令の用字及び用語についても、特に差し支えのない限り、「法令における漢字使用等について」(平成22年内閣法制局長官決定)によることとなる。

2 主要な法令用語

法令において使用される用語の中には、厳密な使い方のなされているものがある。以下、主要な法令用語について説明する。

(1) 以上・以下・未満・満たない・超える

いずれも、数量的限定をする場合に用いる。

「以上」「以下」は、基準点となる数量を含めていう場合に用いる。例えば、「1万円以上の金額」という場合には、1万円を含めてそれより多い金額のことであり、「1万円以下の金額」という場合には、1万円を含めてそれより少ない金額のことである。

「未満」「満たない」「超える」は、基準点となる数量を含めないでいう場合に用いる。例えば、「1万円未満の金額」「1万円に満たない金額」というのは、1万円を含まないでそれより少ない金額のことであり(「未満」と「満たない」とは、同義語である。)、「1万円を超える金額」というのは、1万円を含まないでそれより多い金額のことである。

(2) 以前・以後・以降・前・後

いずれも、時間的限定をする場合に用いる。

「以前」「以後」「以降」は、基準点となる日時を含めていう場合に用いる。例えば、「4月1日以前」というのは、4月1日を含めてそれより前のことであり、「4月1日以後」「4月1日以降」というのは、4月1日を含めてそれより後のことである。

なお、「以後」と「以降」とは、同義語であるが、一般的には、「以後」が用いられ、「以降」は、制度的に毎年又は定期的に継続して行われる事項を限定する場合に用いられることが多い。

「前」「後」は、基準点となる日時を含まないでいう場合に用いる。例えば、「4月1日前」というのは、4月1日を含まないでそれより前のことあり(「3月31日以前」というのと同義である。)、「4月1日後」というのは、4月1日を含まないでそれより後のことである(「4月2日以後」というのと同義である。)

(3) 以内・内・以外

「以内」「内」は、時間的限定や空間的限定をする場合に用いる。「以内」は基準点を含み、「内」は基準点を含まない。したがって、例えば、「1週間以内」というのは、1週間という基準点を含み、「1週間内」というのは、1週間という基準点の直前までをいう、ということになるが、実際問題として両者に差違は生じない。結局、「以内」と「内」とは、同義語であるとみても差し支えない、といえる。

「以外」とは、「以外」という言葉の前に出てくる対象物を除いた別の対象物を捉えて指す場合に用いる。すなわち、「…を除く別の」という意味である。

(4) 及び・並びに

いずれも併合的接続詞であり、英語の「and」に相当する。

ア 同じ段階で接続する場合

併合的接続が同じ段階の場合(並列する語句に意味上の区別を設ける必要のない場合)には、「及び」を用いる。

接続する語句が二つのときは、読点を用いないで「及び」で結び(例えば、「A及びB」というように)、三つ以上のときは、最後の二つの語句だけを読点を用いないで「及び」で結び、それより前の接続は読点で結ぶ(例えば、「A、B及びC」「A、B、C及びD」というように)

なお、接続する語句が動詞、形容詞又は副詞の場合には、接続する語句が二つのときも、「、及び」というように「及び」の前に読点を付けて結び(例えば、「…し、及び…する」というように)、三つ以上のときも、最後の二つの語句を「、及び」というように読点を付けて結び、それより前の接続も読点で結ぶ(例えば、「…し、…し、及び…する」というように)

イ 2段階になる語句を接続する場合

併合的接続が2段階になる場合(並列する語句に意味上の区別がある場合)には、小さな意味の接続に「及び」を用い、大きな意味の接続に「並びに」を用いる(例えば、AとBが接続し、これとCが接続する場合には、「A及びB並びにC」というように)

なお、接続する語句が動詞、形容詞又は副詞の場合には、「、及び」「、並びに」というように、「及び」「並びに」の前に読点を付けて結ぶ(例えば、「…し、及び…し、並びに…する」というように。次のウの場合も、同様である。)

ウ 3段階以上になる語句を接続する場合

接続の関係が更に複雑になって、意味の内容が3段階以上になる場合には、一番小さい意味の接続のところだけを「及び」で結び、それ以上の段階の接続は全て「並びに」を用いて結ぶ(この場合の「並びに」の使い分けを「大並び」「小並び」と呼ぶ。)

エ 補足的説明

(ア) 「及び」「並びに」は、併合的接続詞であるが、併合の仕方に注意すべき点がある。例えば、「A物質によって汚染された施設及びB物質によって汚染された施設に立ち入ってはならない」という場合には、「A物質によって汚染された施設への立入り」も「B物質によって汚染された施設への立入り」も禁止されるが、「A物質及びB物質によって汚染された施設に立ち入ってはならない」という場合には、「A物質とB物質の双方によって汚染された施設への立入り」が禁止される。

(イ) 最後の語句に「等」「その他(の)」の語句を付ける場合には、通常、全ての語句を読点で結び、「及び」「並びに」の接続詞は用いない(例えば、「A、B、C、D等」というように)が、「等」「その他(の)」で接続した語句を一つのまとまりとして他の語句と接続する場合もあり得るので、そのような場合には、「及び」「並びに」を用いて接続することがある。

(ウ) 「たすきがけ」における「及び」

語句の結び付きが「AのC及びD」「BのC及びD」のような関係にある場合には、これらをまとめて、「A及びBのC及びD」とするのが一般である(「たすきがけ」と呼ばれる。)。例えば「A及びBの氏名及び住所」というように用いられる。

(5) 科する・処する・課する

「科する」は、刑罰、行政罰としての過料又は団体の規律維持のための懲罰を一般的な形で規定する場合に用いる。

「処する」は、具体的に罪とこれに対する刑罰を規定する場合に用いる。

「課する」は、国、地方公共団体その他公共的な団体が、国民又は住民に対し、公権をもって租税その他の金銭などを賦課し、徴収することを規定する場合に用いる。

(6) かつ

「及び」「並びに」と同様に併合的接続詞である。接続する語句が互いに密接不可分の関係にあり、二つの語句が一体となって意味が完全に表される場合に用いる。また、「かつ」の前後の二つの語句の接続に重点が置かれる場合にも用いる。

なお、「かつ」で文章を接続する場合には、「かつ」の前後に読点を付ける。ただし、名詞と名詞とを「かつ」で結ぶ場合には、読点を付けない。

(7) 規定・規程

「規定」は、個々の条項を指示する場合に用いる。

「規程」は、一定の目的のために定められた一連の条項の総体を一団の定めとして呼ぶ場合に用いる(したがって、「規程」は、「条例」「規則」というような立法の形式を意味するものではない。)。また、このような一団の定めに付された具体的な名称としてその題名に用いられる(内部組織に関する規則や訓令の題名に用いられることが多い。例えば、「○○行政組織規程」のごとしである。)

(8) 準用する・例による

「適用する」が、特定の規定をその規定の本来の目的とするものと本質の異ならないもの(人、事項、事件等)に対して、そのまま当てはめて働かせる場合に用いるのに対し、「準用する」とは、ある事項を規定しようとする場合に、それと本質の異なる(しかし、それと類似する)他の事項に関する規定を借りてきて、これに適当な修正を加えて当てはめて働かせる場合に用いる。これは、類似する事項について同じような規定を設けることの煩雑さを避けるためである。

準用規定の書き方は、「第○条の規定は、…について準用する」とするのが原則である(先行する文章との関係によっては、「…の場合においては、第○条の規定を準用する」又は「…については、第○条の規定を準用する」とすることもある。)。準用に伴い、どのような修正を加えて当てはめるべきかについて疑義が生じるおそれのある場合は、読替規定を置いて準用される規定に加えられるべき修正点を明確にする。読替規定は、「この場合において、第○条中「○○」とあるのは、「△△」と読み替えるものとする」、「この場合において、第○条中「○○」とあるのは「△△」と、第△条中「△○」とあるのは「○△」と、第○○条中「○○○」とあるのは「△△△」と…読み替えるものとする」、「この場合において、第○条及び第△条中「○○」とあるのは、「△△」と読み替えるものとする」、「この場合において、第○条中「○○」とあり、及び「△△」とあるのは、「○○○」と読み替えるものとする」というようにする。

「例による」は、ある事項を規定しようとする場合に、それと本質の異なる(しかし、それと類似する)他の事項に関する制度を借りてきて、その制度によるのと同じように取り扱うという場合に用いる。これは、類似する事項について同じような制度に関する規定を設けることの煩雑さを避けるためであり、したがって、「準用する」の場合と同じような結果を生じる。ただ、「準用する」というのが、他の事項に関する個々の規定を捉えてきてそれによるという場合であるのに対し、「例による」というのは、他の事項に関する制度を包括的に捉えてきてそれによるという場合である、という違いがある。

(9) 推定する・みなす

「推定する」は、ある事実について、当事者間に取決めがない場合又は反対の証拠が挙がらない場合に、法が一応こうであろうという判断を下して、そのような取扱いをする場合に用いる。したがって、当該事実について当事者間に別段の取決めがあり、又は反対の証拠が挙がれば(法の推定と異なることが立証されれば)、法の一応の推定は覆され、その取決め又は証拠に基づいた取扱いがなされる。

「みなす」は、ある事物(A)を、それと性質を異にする他の事物(B)と、一定の法律関係において同一視し、当該他の事物(B)について生じる法律効果を、その事物(A)について生じさせる場合に用いる。「みなす」は、同一の事物でないこと(AはBでないこと)の反証を許さず、一定の法律関係に関する限り、絶対にこれを同一視する(AはBであるとして取り扱う。)点において、「推定する」と異なる。

(10) することができない・してはならない

「することができない」は、法律上の権利又は能力がないことを表す場合に用いる。このような規定に違反する行為は、法律上の行為としては欠陥があることになるが、不作為義務に違反するものではないから、このような行為に対しては、罰則規定は設けられない。

「してはならない」は、不作為義務を課する場合に用いる。このような規定に違反する行為に対しては、不作為義務違反として罰則規定が設けられることがある。

なお、「することができない」と「してはならない」とを厳密に使い分けていない立法例があるので、注意する必要がある。

(11) することができる・しなければならない・するものとする

「することができる」は、一定の行為をすることが可能であることを表す場合に用いる。一定の行為をするかしないかの裁量権を付与する場合と、一定の行為をする権利又は能力を付与する場合との、2通りの用い方がある。

「しなければならない」は、一定の行為をすることを義務付け、それをするかしないかの裁量の余地を与えない場合に用いる。

「するものとする」は、「しなければならない」よりは義務付けの感じが弱く、ある原則なり方針なりを示すという場合に用いる(「するものとする」は、解釈として、合理的な理由があればしなくてもよいという意味も出てくるので、その用い方には注意する必要がある。)

(12)前・次

ある規定の中でその規定の前又は後にある条、項、号等を指示する場合には、その指示する条等の条名等を用いないで、「前」又は「次」を用いて表現することがある。

ア 「前」

(ア) ある条、項、号においてその直前の条、項、号を指示する場合には、「前条」「前項」「前号」とする。

(イ) ある条、項、号においてその直前に先行する二つの条、項、号を指示する場合には、「前2条」「前2項」「前2号」とする。

(ウ) ある条、項、号においてその直前に先行する三つの条、項、号を指示する場合には、「前3条」「前3項」「前3号」とする。

(エ) ある条、項、号においてその直前に先行する条、項、号の全てを指示する場合で、その指示する条、項、号の数が四つ以上のときは、「前各条」「前各項」「前各号」とする(先行する条、項、号の全てを指示する場合でも、その指示する条、項、号の数が三つ以下のときは、(ア)から(ウ)までに従う。)

(オ) ある条、項、号においてその直前に先行する条、項、号の一部を指示する場合で、その指示する条、項、号の数が四つ以上のときは、「第○条から前条まで」「第○項から前項まで」「第○号から前号まで」とする(先行する条、項、号の一部を指示する場合でも、その指示する条、項、号の数が三つ以下のときは、(ア)から(ウ)までに従う。)

イ 「次」

ある条、項、号においてその条、項、号の直後の条、項、号を指示する場合には、「次条」「次項」「次号」とする。

なお、「前2条(項・号)」「前3条(項・号)」「前各条(項・号)」に対応すべき「次2条(項・号)」「次3条(項・号)」「次各条(項・号)」の表現は用いられない。

ウ 以上のほか、直前又は直後の章、節等を指示する場合にも、「前」又は「次」を用いる(その用い方は、条、項、号の場合と同様である。)

(13) 前項の場合において・前項に規定する場合において

「前項の場合において」は、前項で規定した事項の補足的事項を、項を改めて規定する場合に用いる(項を改めて規定するまでもないときは、同一の項に「この場合において」(後段)として規定する。)。語調の関係から、「前項の場合においては」というように、「は」が加えられることがある。

「前項に規定する場合において」は、前項の中で仮定的条件を示す「…する場合においては(は)」、「…するときは」、「…する場合において、…するときは」等の部分を受けて、「その場合に」という意味を表そうとするときに用いる。「前項の場合において」が前項の全部を受けるのに対し、「前項に規定する場合において」は、前項の一部(仮定的条件の部分)のみを受ける。

前項が本文とただし書から成る場合で、本文で規定した事項の補足的事項を項を改めて規定するときは、「前項本文の場合において」とし、ただし書で規定した事項の補足的事項を項を改めて規定する場合には、「前項ただし書の場合において」とする。

なお、前2項・前3項・前各項で規定した事項の補足的事項を項を改めて規定する場合には、「前2項の場合において」「前3項の場合において」「前各項の場合において」とする。

(14) その他の・その他

「その他の」は、「その他」の前にある名詞(名詞句)が、「その他の」の後にある、より意味内容の広い名詞(名詞句)の例示としてその中に包含される場合に用いる。例えば、条例で、「野球場、陸上競技場その他の規則で定める運動施設」という場合には、「野球場」「陸上競技場」は、「運動施設」の例示であり、「運動施設」に含まれる概念である。したがって、この条例の委任を受けて規則で「運動施設」を規定する場合には、「条例第○条の規則で定める運動施設は、野球場、陸上競技場、水泳プール、ゴルフ場及びバレーボール場とする」というように、「野球場」「陸上競技場」をも含めて掲げる必要がある。

「その他」は、「その他」の前にある名詞(名詞句)と「その他」の後にある名詞(名詞句)とが並列の関係にある場合に用いる。例えば、「地上権、地役権その他規則で定めるこれに準ずる権利」という場合には、「地上権」「地役権」と「これに準ずる権利」とは、並列の関係にある。したがって、この条例の委任を受けて規則で「これに準ずる権利」を規定する場合には、「条例第○条の規則で定めるこれに準ずる権利は、永小作権及び入会権とする」というように、「地上権」「地役権」以外のものを掲げる。

(15) ただし・この場合において

いずれも、一つの条、項、号の中で、主たる文章に続けて(行を改めることなく)、新しい文章を書く場合に用いる。

「ただし」は、主たる文章に対する除外例や例外事項又は注意事項を規定する場合に用いる。「ただし、…の場合は、この限りでない」という表現になることが多い。「ただし」で始まる文章を「ただし書」と呼び、これに対する主たる文章を「本文」と呼ぶ。

「この場合において」は、主たる文章の趣旨を補足的に説明し、又はこれと密接な関係を持つ内容の事項を続けて規定する場合に用いる(読替規定も、「この場合において、…」という形で書かれる。)。「この場合において」で始まる文章を「後段」と呼び、これに対する主たる文章を「前段」と呼ぶ(「この場合において」に続く文章が長くなるような場合には、「前項の場合において」というようにして、別行(項)を起こして書かれることがある。)

(16) 直ちに・遅滞なく・速やかに

いずれも時間的即時性を表す場合に用いる。

「直ちに」は、最も時間的即時性が強く、何をさておいてもすぐに行わなければならないという意味を表す場合に用いる。

「遅滞なく」は、正当な理由又は合理的な理由がない限り直ちに行わなければならないという意味を表す場合に用いる。

「速やかに」は、訓示的な意味を持たせてできる限り早く行わなければならないという意味を表す場合に用いる。

「速やかに」は、訓示的な意味で用いるので、遅滞があった場合にも直ちに違法ということにはならないが、「直ちに」と「遅滞なく」は、遅滞があった場合には、違法の問題にまで発展することが多い、といわれる。

なお、「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」の順で時間的即時性が弱くなる、と理解されることもある。

(17) 次に掲げる……・次の各号の一に……等

各号列記以外の部分で各号を指示する場合には、原則として、「次に掲げる…」「次の事項…」というように簡潔に表現し、「次の各号…」という表現は、その後で「当該各号」と受けて書く場合及び「各号の一に」「各号のいずれかに」「各号のいずれにも」等と表す場合に限って用いる。

なお、罰則規定で刑罰を科せられるべき行為を掲げる場合には、「次の各号の一に…」という表現を用いるのが通例であったが、最近は「次の各号のいずれかに…」の表現が用いられている(「次の各号の一に…」と「次の各号のいずれかに…」とは、同義である。)

(18) 同

「同」は、一つの文章の中で、最も近い場所に表示された条、項、号等と同一の条、項、号等を表示する場合に用いる。「同」の用い方は、次のとおりである。

ア 「同」は、最も近い場所に表示された条、項、号等を受けるものであるから、例えば、「…第○条…第△条…同条…」という場合には、「同条」は「△条」を示す(したがって、もう一度「第○条」を示さなければならない場合には、「…第○条…第△条…第○条…」と繰り返すことになる。)

イ 同一の条における同じ項又は同じ号を受ける場合には、「同条同項」又は「同条同号(同条同項同号)」とせずに、単に「同項」又は「同号」とする。例えば、「…第○条第1項…同項…」というようにする(「同項」は、「第○条第1項」を示す。)

ウ 「同」で受けることができるものは、法律・政令・省令・条例・規則等の題名、章、節等の章名等、条、項、号の条名等(「第○条」等を「同条」等と受けることができるだけでなく、「前条」「次条」等も「同条」等と受けることができる。したがって、例えば、「…第○条…前条…同条…」という場合には、「同条」は「前条」を示すことに注意)、表・様式、年月日等である。

エ 「同」で受けることができるのは、同一の文章の中でだけであるが、ただし書や後段の中で本文や前段の中の条、項、号等を「同」で受けることは差し支えない。

オ 括弧書が文章中にあり、「同」を用いると、「同」が何を受けるのか疑問が生じる場合には、「同」を用いないで繰り返して書く。例えば、「…第○条…(…第△条…)…同条…」というような場合には、「同条」が「第○条」を示すのか、「第△条」を示すのか疑問が生じる。そこで、このような場合には、「同条」を用いないで、「…第○条…(…第△条…)…第○条…」又は「…第○条…(…第△条…)…第△条…」と繰り返して書く(したがって、以上のような疑問の生じない場合には、「同」を用いてよい。例えば「…(…第○条…)…同条…」のような場合である。)

カ 略称規定を用いた場合には、以後その略称を用い、「同」は用いない。例えば、「○○○法(平成○年法律第○号。以下「法」という。)」又は「平成○年○月○日(以下「施行日」という。)」というようにした場合には、以後必ず「法」又は「施行日」を用い、「同法」又は「同日」で受けることはしない。

(19) 当該・当該職員

「当該」は、「その」という意味で、ある規定の中の特定の対象を捉えて、それが前に掲げられた特定の対象と同一のものであることを示す冠詞として用いる。英語の「the」に該当する。また、「当該」は、そこで問題となっている「当の」という意味にも用いる。

「当該職員」は、「その事務について権限又は職責を持っている職員」という意味で用いられる。「当該職員」の「当該」は、具体的な対象を指示するものではなく、「当該職員」という固有名詞的に用いられる。

(20) とする

「とする」は、「である」が単なる事実の説明にとどまる場合に用いるのに対し、創設的・拘束的な意味を持たせる場合に用いる。

(21) 同様とする

「同様とする」は、ある事項について定められた法的な取扱いと同様の取扱いをする場合に、同種の規定を繰り返すことを避けるために用いる。

(22) なお従前の例による・なお効力を有する

条例・規則を改廃した場合に、旧条例・規則の適用を受けていた対象に対して、経過的に改廃前と同様の取扱いをするために、旧条例・規則の効力又は旧制度を一時持続させる必要が生じることがある。この場合の規定の仕方としては、…については「なお従前の例による」とする方法と、旧規定は「なおその効力を有する」とする方法とがある。

「なお従前の例による」という表現は、旧条例・規則の規定はその効力を失っているが、一定の事項について包括的に旧条例・規則の規定が適用されていた場合と同様に取り扱うことを意味するのに対し、「なおその効力を有する」という表現は、一定の事項について旧条例・規則の規定はその効力を存続して適用されるということを意味する。したがって、①前者の場合には「なお従前の例による」という規定が根拠となり、後者の場合には「なおその効力を有する」という規定によって効力を存続する旧条例・規則の規定が根拠となって、従前と同様の取扱いがなされる。②前者の場合には包括的に従前と同様の取扱いをすることを意味し、後者の場合にはなお効力を有するとされた旧規定だけが効力を存続することを意味するから、例えば条例を改廃した場合、前者にあっては、これに基づく規則について条例の改廃に併せた改廃をすればよく、特に経過措置を設ける必要がないのに対し、後者にあっては、これに基づく規則について改廃をするときに所要の経過措置(旧条例の規定が存続し適用される上で必要な旧規則の規定をなお効力を有するとする措置)を設ける必要がある。③前者の場合には、旧条例・規則の規定は失効しているので、後にこれを改正することはあり得ないのに対し、後者の場合には、旧条例・規則の規定は効力を存続するので、後にこれを改正することも可能である。

いずれも、法令が改廃された場合に、改廃前の状態を経過的に存続させるときに用いるが、「なお従前の例による」が包括的に改廃前の法令の規定によって取り扱われていたのと同様に取り扱うことを意味する(改廃前の法令の規定は、失効している。)のに対し、「なお効力を有する」は一定の事項について改廃前の法令の規定は効力を存続する点で相違がある。

(23) に係る

ある語句と他の語句とのつながりを示す場合に用いる。「に関する」「に関係する」「に属する」「の」等の意味を持っているが、「に関する」「に関係する」よりも直接的なつながりのあるニュアンスを持っている。

(24) に基づき・により

法令の根拠を示す場合には、「に基づき」は条例・規則の第1条の趣旨規定等の中でその根拠を強調して示すときに用い、「により」は個々の条文の中で個別具体的な根拠規定を示すときに用いる。

(25) 場合・とき・時

「場合」は、仮定的な条件又は既に規定された事項を引用する包括的な条件を示す場合に用いる。

「とき」は、「場合」と同じように仮定的な条件を示す場合に用いる(「場合」と「とき」の使い分けについては、明確な基準はない。)

条件を表すために「場合」と「とき」の両者を重ねて用いる場合には、大きな条件を「場合」で示し、小さな条件を「とき」で示す(「…場合において…ときは…」というように)

「時」は、一定の時刻・時点を示す語として用いる。

(26) 又は・若しくは

いずれも選択的接続詞であり、英語の「or」に相当する。

ア 同じ段階で接続する場合

選択的接続が同じ段階の場合(並列する語句に意味上の区別を設ける必要のない場合)には、「又は」を用いる。

接続する語句が二つのときは、読点を用いないで「又は」で結び(例えば、「A又はB」というように)、三つ以上のときは、最後の二つの語句だけを読点を用いないで「又は」で結び、それより前の接続は読点で結ぶ(例えば、「A、B又はC」「A、B、C又はD」というように)

なお、接続する語句が動詞、形容詞又は副詞の場合には、接続する語句が二つのときも、「、又は」というように「又は」の前に読点を付けて結び(例えば、「…し、又は…する」というように)、三つ以上のときも、最後の二つの語句を「、又は」というように読点を付けて結び、それより前の接続も読点で結ぶ(例えば、「…し、…し、又は…する」というように)

イ 2段階になる語句を接続する場合

選択的接続が2段階になる場合(並列する語句に意味上の区別がある場合)には、大きな意味の接続に「又は」を用い、小さな意味の接続に「若しくは」を用いる(例えば、AとBが接続し、これとCが接続する場合には、「A若しくはB又はC」というように)

なお、接続する語句が動詞、形容詞又は副詞の場合には、「、又は」「、若しくは」というように、「又は」「若しくは」の前に読点を付けて結ぶ(例えば、「…し、若しくは…し、又は…する」というように。次のウの場合も、同様である。)

ウ 3段階以上になる語句を接続する場合

接続の関係が更に複雑になって、意味の内容が3段階以上になる場合には、一番大きい意味の接続のところだけを「又は」で結び、それ以下の接続は全て「若しくは」を用いて結ぶ(この場合の「若しくは」の使い分けを「大若し」「小若し」と呼ぶ。)

エ 補足的説明

「又は」「若しくは」の用法について、以下若干の補足をする。

(ア) 「又は」「若しくは」は選択的接続詞であるが、「及び」の意味も含んで(Aか、Bか、ABの双方という意味で)用いることもできる。例えば、「○○と引換えに、又はそれを提示して商品を購入する」という場合には、「引換え」か「提示」のいずれかであるが、「○○業者に対し報告をさせ、又はその職員に○○業者の営業所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる」という場合には、「報告をさせること」と「立入検査をさせること」の一方だけを行うことも、その双方を行うこともできる。

(イ) 接続する語句が動詞等の場合には、「、又は」「、若しくは」というように、「又は」「若しくは」の前に読点を付けて結ぶのが原則であるが、文脈の関係を考慮して、読点を付けないこともあるのは、「及び」「並びに」の場合と同様である。

(ウ) 最後の語句に「等」「その他(の)」の語句を付ける場合には、通常、全ての語句を読点で結び、「又は」「若しくは」の接続詞は用いないが、「等」「その他(の)」で接続した語句を一つのまとまりとして他の語句と接続する場合もあり得るので、そのような場合には、「又は」「若しくは」を用いて接続することがあるのは、「及び」「並びに」の場合と同様である。

(エ) 「たすきがけ」における「又は」

語句の結び付きが、「AのC又はD」「BのC又はD」のような関係にある場合には、これらをまとめて、「A又はBのC又はD」とするのが、一般である(「たすきがけ」と呼ばれる。)。例えば、「A又はBの事務の全部又は一部」というように用いられる。

(27) 者・物・もの

「者」は、法律上の人格者、すなわち自然人及び法人を指す場合に用いる(「者」の中に法人格なき社団等も含めて規定している例もある。)

「物」は、人格者以外の有体物を指す場合に用いる。

「もの」は、「者」又は「物」に当たらない抽象的なものを指す場合や一定の行為主体として法人格なき社団・財団だけを指す場合又はこれらと人格者(自然人・法人)とを含めて指す場合に用いるほか、例えば、「…年齢満20年以上の者で引き続き3か月以上市町村の区域内に住所を有するものは、…」というように、英語の関係代名詞に当たる用法で一定の者又は物を限定する場合に用いる。

3 片仮名語の言い換え

片仮名語とは、主に外来語、外国語及び和製外国語(外国語を基に日本で作られた片仮名表記の語)のことをいう。日本語の一部として定着しつつあり、行政が作成する文書においても片仮名語を目にすることが非常に多くなっているが、片仮名語の多用は、文書の意味を分かりにくくする危険性があるため、片仮名語の言い換えが求められることがある。

次に紹介する一覧は、個々の片仮名語に、どのような言い換え語を当てるのが最も適切であるのか、その目安を具体的に示したものである。(※「外来語・役所ことば言い換え帳」(編集:杉並区役所、発行:株式会社ぎょうせい)を参照した。)

□アウト・ソーシング  外部委託

□アカウンタビリティー  説明責任

□アクションプラン  行動計画、実行計画

□アドバンテージ  有利性、長所

□アプローチ  取組 接近すること(研究方法、建物等に通じる道)

□アメニティー  快適環境

□イノベーション  技術革新 経営革新

□インキュベーション  起業支援 創業支援

□インセンティブ  意欲刺激 奨励金 報奨金

□インタラクティブ  双方向的 対話型

□インフォームドコンセント  説明に基づく同意納得診療

□エンパワーメント  権限の付与

□オンデマンド  注文対応 受注対応

□ガバナンス  統治 協治 共治

□カンファレンス  協議会 同盟 会議 相談

□ケースカンファレンス  事例診断(利用者への対応をめぐって職員が情報を出し合い、援助の方向性を決めていく話合い)

□コーチング  言い換え困難(コミュニケーションをとりながら目標達成のための解決方法を自ら発見できる能力を高めるための人材育成訓練方法)

□コスト・パフォーマンス  費用対効果

□コミット  確約する 関わる

□コンソーシアム  共同事業体

□サマリー  要約 概括 まとめ

□シェルター  緊急一時避難所

□スキーム  (目標達成までの手順が組織的に練られた)計画 企画

□スクリーニング  選考 審査

□セーフティネット  安全網

□セカンドオピニオン  第二の診断 第二の意見

□ゼロエミッション  排出ゼロ(ごみを利用しつくす技術体系や経営手段を意味する理念)

□ソリューション  問題解決(利益を上げるための新しい事業の仕組みの構築)

□デリバリ  配達 宅配 引渡し

□ドメスティック・バイオレンス  言い換え語なし(家庭内、配偶者間暴力。夫・パートナーからの暴力)

□トワイライト型  長時間開所型

□ノンストップサービス  言い換え語なし(三百六十五日二十四時間の行政サービス)

□バイオマス  生物エネルギー

□ハザードマップ  災害予想地図 防災地図

□パブリシティ  情報提供活動

□パブリックインボルブメント  言い換え語なし(計画策定の段階から広く住民や有識者などの意見を求めながら公共事業を行う制度)

□パブリックコメント  言い換え語なし(意見公募ともいえるが、政策立案に当たり素案を公表し、寄せられた意見・情報を考慮して最終決定を行う制度)

□バリュー・エンジニアリング  言い換え語なし(組織的なコスト引下げの技術、方法)

□ビオトープ  小生活圏 自然生態圏(限られた地域に元来そこにあった自然風景を復元することをいう)

□ファシリテーター  まとめ役

□フォーラム  言い換え語なし(出席者全員が参加する方式の公開討論会)

□プライマリー・ケア  初期医療(病院で一般外来で行われる患者と医師の最初の診療を指す。専門外来と一般入院は二次医療、専門医療は三次医療という)

□プレゼンテーション  (企画や発案の)提示 説明 発表

□ベンチマーク  計測指標 水準点(判断、判定のための基準)

□マニフェスト  政策綱領(具体的な政策目標などを掲げた公約集)

□メセナ  文化芸術支援活動

□ユニバーサルデザイン  言い換え語なし(万人向け設計の意味で、全ての人が使いやすく分かりやすい安全快適な町、サービスを目指す考え方。誰にも公平で使いやすいことが前提)

□ユビキタス  言い換え語なし(人間の生活環境の中にコンピュータチップとネットワークが組み込まれ、それを意識することなくインターネットを始めとする情報ネットワークに接続できる環境を指す)

□リテラシー  読み書き能力

□レファレンス  調査 相談 照会

□ローリング  見直し 改定

□ワーク・シェアリング  言い換え語なし(仕事の分かち合い。労働者一人当たりの労働時間を短くして雇用機会、雇用者を増やすこと)

□ワークショップ  作業場 研修会 講習会

□ワンストップサービス  言い換え語なし(一か所で全ての用事を済ませる行政窓口)

4 役所言葉の見直し

役所言葉とは、その名のとおり役所で使われる言葉のことをいうが、難解な用語や行政特有の表現が多く、形式ばった、堅苦しい、曖昧又は分かりにくいとの批判があるため、近年、多くの自治体で役所言葉の見直しが行われている。

・時代遅れの堅苦しい言い回しはやめる。

・命令的、押し付けがましい表現は改める。

・過剰な敬語、曖昧な言い方は率直な表現にする。

・専門語、略語、片仮名語はできるだけ使わない。

以上のような視点に基づき、役所言葉を見直し、分かりやすく、親しみやすい文書を作成することに努めることとする。

次の一覧は、気になる役所言葉や言い回しを、分かりやすく言い換える場合に、どんな表現が適切であるかを示したものである(※「公務員の教科書 国語編」(著:伊藤章雄、発行:株式会社ぎょうせい)を参照した。)。次の言葉については表のとおり言い換えることが望ましい。

□按分する→~の割合に応じて割り振る

□遺憾である→残念である

□いかんともしがたく→どうにもならないので

□意見具申する→意見を述べる

□いたしたく→~したいので

□遺漏のないよう→洩れや落ちがないように

□鋭意→懸命に

□解する→分かる

□かかる→このような

□~に係る→~に関する、~についての

□可及的速やかに→早急に、できるだけ早く

□各般にわたり→いろいろと、それぞれの

□~(出席)方→(出席)について

□可能な限り→できる限り

□勘案して→工夫して、考慮して

□~に鑑み→~を考慮して

□還付する→返還する、返す

□かん(涵)養する→養成する、育成する、育てる

□肝要である→とても重要である、とても大切である

□疑義を生じる→疑問が出る

□危惧する→心配する

□毀損する→壊す、傷つける、損なう

□忌憚のない→率直な、遠慮なく

□供する→使う、役立てる

□橋梁→橋

□寄与する→役立つ、貢献する

□規定の→定められた

□貴殿→あなた

□具備する→備える

□懸念→心配、気がかり

□現下の→最近の、現在の

□講ずる→行う、実行する

□御高配→御配慮

□御査収→お確かめの上お受け取り

□今般→このたび

□~されたい→~してください

□暫時→しばらく

□~し得ない→~できない

□支障のない→差し支えのない

□資する→役立てる

(~する)次第です→~します

□若干の点→いくつかの点

□事由→理由、原因

□従前の→これまでの、以前の

□充当する→充てる

□主管課→担当課

□熟読の上→十分読んで

□遵守する→守る

□証する→証明する

□所定の→定められた

□所要の→必要な

□思料する→考える、認める

□進捗状況→進み具合、進行状況

□数次に→数回に

□すべく→するように、するために

□せられたい→してください

□先般→先日、先頃

□送致する→送る、送付する

□措置→処置、取扱い

□その旨→そのこと、その内容

□疎明する→弁明する、証明する

□対処する→対応する、取り組む

□多大なる→多くの

□賜る→いただく

□逐次→次々に、だんだん

□遅滞なく→滞りなく、遅れないように

□衷心より→心から

□聴取する→聴く

□徴する→求める、要求する

□貼付する→貼る、貼り付ける

□突合する→付き合わせる、照らし合わせる

□当該→その~、この~

□特段の→特に

□捺印→印鑑を押す

□拝察する→お察しする、思う

□図られたい→するようにしてください

□甚だ→大変、大層

□頒布する→配布する

□逼迫する→差し迫る、行き詰る

□返戻する→戻す、返却する、返す

□本件→この件、このこと

□~の向きは→~される方は

□目処とする→目指す

(~を)もって→~して、で

(する)者→(する)方、(する)

□有する→ある、もっている

□要する→必要とする

□~裏に→~のうちに

□留意→注意、配慮、考慮

□了知→理解、了解、承知

付録

公用文

用字・用語の基礎知識

佐伯市

凡例

1 本書は、公用文の作成に関する体系的な解説書ではなく、重要度や使用頻度の高いものなどをピックアップし、その意義、使用例等を重点的に解説したものであって、採用した項目の数も五十余りと限られている。

したがって、本書の使用に当たっては、公用文の作成に際して疑問が生じた場合に、その都度これを開き、辞書代わりに使用することもできないではないが、むしろ、各自で1日に読む項目の数を決めておいて、毎日少しずつ読み進んでいくという方法によって、そこに書いてある内容のほとんどをあらかじめ修得しておき、事務上、疑問などが生じたときに、確認の意味でこれを開くようにするのが効果的である。

2 本書の内容は、主に「公用文 用字用語の要点」(廣瀬菊男著 新日本法規出版株式会社)によって作成したが、次の文献その他も参考にした。

(1) 法令用語の基礎知識(田島信威著 株式会社ぎょうせい)

(2) 大分県公用文のてびき(大分県総務部総務課編 第一法規出版株式会社)

(3) 事務の手引(共通編)(鹿児島県川内市役所編 第一法規出版株式会社)

3 本書においては、次の内閣告示等を引用したが、本文では、括弧書の部分は省略した。

(1) 常用漢字表(平成22年11月30日内閣告示第2号)

(2) 送り仮名の付け方(昭和48年6月18日内閣告示第2号)

(3) 公用文における漢字使用等について(平成22年11月30日内閣訓令第1号)

(4) 公用文作成の要領(昭和27年4月4日内閣閣甲第16号内閣官房長官依名通知)

(5) 法令における漢字使用等について(平成22年11月30日内閣法制局長官決定)

(6) 文部省用字用語例(昭和56年12月)

(7) 司法行政文書の書き方(最高裁判所事務総局編)

(8) 市町村公文例規程(案)(日本加除出版)

4 法令用語については、「及び・並びに」、「又は・若しくは」、「その他・その他の」など一般の公用文においても頻繁に使用されると思われるものに限定して解説した。

5 本書において使用した符号の意義は、次のとおりである。

「・」用字・用語の使用例

「○」正しい使用例又は適切な使用例

「×」間違った使用例又は不適切な使用例

1 …当たり・…に当たり

「当たる」は、様々な意味に用いられるが、次の用例にも注意する。

(1) 接尾語として単位を表す語に付く場合

・ 一人当たり(1,000円)

・ 一軒当たり

・ キロ当たり

・ 地区当たり

(2) 開会、閉会、終了、落成、出発、着任などに「際して」、「臨んで」の意味で「…に当たり」の形で用いられる場合

・ 開会(式)に当たり

・ 出発(式)に当たり

・ 着任(式)に当たり

・ …するに当たり

2 有り難う・ありがとう

公用文では、「ありがとう」と書き、「有り難う」とは書かない。

常用漢字表には、「難」の読みは「ナン、かたい、むずかしい」しか挙げられておらず、「がとう」の読みはないので、「有り難い(がたい)」とは使えても「有り難う(がとう)」とは使えないわけである。

○「ありがとう」

○「有り難い」

×「有り難う」

3 併せて・あわせて

(1) 文と文をつなぐ接続詞として用いるときは、「あわせて」と平仮名にする。

画像 接続詞は、平仮名が原則(例外は、「及び」・「並びに」、「又は」・「若しくは」の4語)

・ 以上のとおり決定する。あわせて、関係者に連絡する。

・ 以上のとおり決定し、あわせて、関係者に連絡する。

(2) 動詞などを修飾する副詞として用いるときは、「併せて」と漢字にする。

画像 副詞は、漢字が原則

・ 健康診断と予防注射を併せて行う。

・ 運賃と宿泊費を併せて支給する。

・ 両者から提示された条件を併せて考慮する。

4 意思・意志

(1) 「意思」も「意志」も、ともに何かをしたいという思い、心である点で共通する。このうち、「意思」は、法律用語であって、物事を行ったり、行わなかったりする場合に、そのときの心の中の思いや考えを法律効果を発生させる基になるもの(法律効果の発生にとって意味があるもの)という観点から見た場合の呼び方である。

政治(行政)・経済面においては、法律的な考え方が用いられるから、「意思」を使う場合が多い。

・ 意思表示

・ 意思能力

・ 承諾の意思

・ 殺人の意思

(2) 「意志」は、心理学及び哲学の分野で又は一般用語として用いられ、例えば、健康のため毎朝散歩をするとか、たばこをやめるという思いや心などのように、あることを行い、又は行うまいとする積極的な心の働きを法的効果の発生とは無関係に見たものである。

・ 意志を貫く

・ 意志が強い

・ 意志薄弱

5 頂く・戴く・いただく

(1) 「頂く」は、「もらう」の謙譲語、「食う」・「飲む」の謙譲語・丁寧語として使用するとき、すなわち、「頂く」という語自体に「もらう」、「食う」、「飲む」などの実質的な意味がある動詞として使用するときに用いる。

・ 表彰状を頂く

・ 本を頂く

・ お土産を頂く(なお、「土産」(みやげ)は、常用漢字表の付表に挙げられている。)

・ 昼食を頂く

・ お酒を頂く

(2) 「戴く」も、「もらう」、「食う」、「飲む」などの意味を表すが、常用漢字表には、「戴」の読みは「タイ」しか挙げられておらず、「いただく」の読みはないので、公用文において「戴く」と書くのは適当でない。

(3) 「いただく」は、「もらう」、「食う」、「飲む」などの意味がない補助動詞として使用する場合に用いる。通常は、「~していただく」という形をとる。

・ 十分に検討していただく × 十分に検討して頂く(戴く)

・ 貴市の制度やその運用状況を参考にさせていただく

× 貴市の制度やその運用状況を参考にさせて頂く(戴く)

・ 御協力(御理解、御配慮…)いただく

× 御協力(御理解、御配慮…)頂く(戴く)

・ お待ちいただく × お待ち頂く(戴く)

・ お越しいただく × お越し頂く(戴く)

6 未だに・いまだに

公用文では、「いまだに」とする。

常用漢字表では、「未」の音訓欄には「ミ」しかなく、「いま」の読みはないので、「未だに」とするのは適切でない。

○「いまだに」

×「未だに」

・ いまだに返答がない

・ 数年前に策定された事業計画は、いまだに実施されない

7 色々・いろいろ

「色」は、実質的に赤とか青とかの「色」そのものを表す場合に用いる。これに対して、実質的な「色」とは関係なく、「種々」、「様々」などの意味を表す場合には、「いろいろ」とする。

8 行う・行なう

「物事をおこなう」という場合の「おこなう」は、「行う」と書き、「な」を送って「行なう」とは書かないものとする。

「送り仮名の付け方」の本文通則1の本則では、活用のある語は活用語尾を送るとされており、これによれば、「おこなう」は「行う」となり、また、常用漢字表の「行」の読み「おこなう」の例欄にも「行う」が挙げられている。

なお、上記「送り仮名の付け方」本文通則1の許容では、「行う」など一定の語については、活用語尾の前節から送り、「行なう」としてもよいとされているが、国は、法令の改正に付随して、逐次「行なう」の表記を「行う」に改めているところであり、本市においても、公用文の表記の統一を図る意味から「おこなう」は「行う」と書くものとする。

○「行う」

×「行なう」

9 置く・おく

(1) 「置く」は、物を一定の場所に据える場合や役職・機関等を設ける場合など、「置く」という語自体に意味がある場合、すなわち動詞として使用するときに用いる。

・ 支所を置く

・ 役員を置く

・ 審議会(委員会)を置く

条例等の制定案などにおいて、

「○○○○のため○○○審議会(委員会)を置く。」とすべきところ、「○○○○のため○○○審議会(委員会)をおく。」としている例が多いので、注意する。

(2) 「おく」は、物を据えるとか役職・機関等を設けるなどのような実質的な意味を伴わない補助動詞として使用するときに用いる。通常は、「~しておく」という形をとる。

・ 準備しておく

・ 明確にしておく

・ 調べておく

10 及び・並びに

(1) 「及び」も「並びに」も、ともに前の語句と後の語句とが並列の関係にあることを表す接続詞である。画像「接続詞は、平仮名が原則」の例外の一つ

(2) 二つ以上の語句を単純に並列的に並べるときは、最後の語句の前に「及び」を入れる。画像「並びに」ではない点に注意する(下記(3)参照)

(類型)

・ A及びB(…し、及び…する)

・ A、B及びC(…し、…し、及び…する)

・ A、B、C及びD(…し、…し、…し、及び…する)

(具体例)

・ 地方公共団体は、普通地方公共団体及び特別地方公共団体とする(地方自治法1条の3第1項)。

・ 特別地方公共団体は、特別区、地方公共団体の組合、財産区及び地方開発事業団とする(地方自治法1条の3第3項)。

(3) 連結される三つ以上の語句に、まとまり(分類)の上から段階(強弱)があるときは、小さな段階での接続に「及び」を、大きな段階での接続に「並びに」を用いる。

例えば、AもBもCもという場合、これらを単純に並べるときは「A、B及びC」とすれば足りるが、「AとB」の結び付きが「C」との結び付きよりも一層強く、そのことを意識的に表そうとするときは、「AとB」のグループを「及び」を使ってワンセットにして「A及びB」とし、更にそれと「C」とを「並びに」を使って結び付け、「A及びB並びにC」とするわけである。

このことは、一つの文章の中で、「及び」のないところに「並びに」が出ることはないことを意味する。逆にいえば、ある文章に「並びに」があれば、その文章のどこかに「及び」があることになる。

(類型)

・ A及びB並びにC(…し、及び…し、並びに…する)

・ A、B及びC並びにD(…し、…し、及び…し、並びに…する)

・ A、B、C及びD並びにE(…し、…し、…し、及び…し、並びに…する)

(具体例)

・ 給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない(地方自治法204条3項)。

画像

・ 当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出し、並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる(行政手続法20条2項)。

画像

(4) 上記(3)の場合において、連結される語句のまとまり(分類)に三つ以上の段階があるときには、そのうちの最も小さいまとまり(分類)の中における接続についてだけ「及び」を使い、それより大きいまとまり(分類)の中における接続については、まとまり(分類)が何段階あっても全て「並びに」を用いる。

・ 職員の給与は、生計費並びに及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従業者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない(地方公務員法24条3項)。

画像

11 終わり・終り

公用文においては、「終わり」とし、「終り」とはしない。

「終わり」に「わ」を送るのは、「送り仮名の付け方」本文通則2の本則「活用語尾以外の部分に他の語を含む語は、含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。」の例(1)に基づくもので、「終える」に合わせたものである。

12 箇・か・個・カ・ケ

(1) 公用文においては、数詞に続けて物を数えるのに添える語としては「箇」及び「か」を使い、「個」・「カ」・「ケ」は使わない。

画像

画像

(2) 「箇」は、漢字や漢数字に続けて書く場合(複合の語)及び単独で「箇所」とする場合に用いる。

ア 漢字や漢数字に続けて書く場合(複合の語)

・ 関係箇所

・ 何箇月、何箇年、何箇所、何箇条

・ 数箇所

・ 二、三箇所

イ 単独で「箇所」とする場合

・ 関係する箇所がある

・ 注目すべき箇所がある

なお、新聞では、「箇」に代えて「個」を用いることとしており、公用文とは全く別の基準によっているので注意を要する。

(3) 「か」は、数字(算用数字、漢数字)に続く場合に用いる。

・ 3か所、3か月、3か年、3か条

13 括弧書の仕方(文章の末尾に括弧書を付け加える場合)

文章の末尾に括弧書を付け加える場合には、句点(。)は、次のように括弧の前には付けず、括弧の終わりに付ける。

…………である(…………)。

・ 毎週月曜日は、会館の休館日です(会館規則参照)。

そして、括弧の中の文章が動詞など名詞形以外の形で終わる場合には、括弧の中の文章の終わりにも句点を打つ。

…………である(…………である。)。

・ 年齢を表す「さい」は、公用文では正式には「歳」とする(「才」は、「歳」の便宜的な代用、俗用である。)。

・ 憲法が保障する地方公共団体は、市町村と都道府県であるとされている(これらは、地方自治法にいう普通地方公共団体に当たる。)。

実際の文書では、上記の例でいえば、次のような書き方をしているものがあるので、注意する。

× 年齢を表す「さい」は、公用文では正式には「歳」とする。(「才」は、「歳」の便宜的な代用、俗用である)

14 且つ・かつ

(1) 公用文においては、「かつ」とする。

「且」は、常用漢字表にはあるが、「公用文における漢字使用等について」の別紙1(2)オにおいて、接続詞「かつ」は「かつ」と仮名書きにするとされているので、「且つ」は使用しない。

○ 「かつ」

× 「且つ」

(2) 句(文章)と句(文章)を「かつ」でつなぐときは、「かつ」の前後に読点(、)を打ち、語と語を「かつ」でつなぐときは、「かつ」の前後に読点(、)は打たない。

(句(文章)と句(文章)を「かつ」でつなぐとき)

・ 公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進する

(語と語を「かつ」でつなぐとき)

・ 本市の事務事業の適正かつ円滑な遂行を図る

・ 環境行政の総合的かつ計画的な推進を目的とする

15 から・より

「公用文作成の要領」第2の4注1において、「から」と「より」は、次のように使い分けることとされている。

(1) 「から」は、時及び場所の起点を示す場合に用いる。

・ 午後1時から○○○会議を始める

× 午後1時より○○○会議を始める

・ ○○フェスティバルを9月1日から開催する

× ○○フェスティバルを9月1日より開催する

・ ○○課からお知らせします

× ○○課よりお知らせします

・ 佐伯から東京まで出張する

× 佐伯より東京まで出張する

(2) 「より」は、比較を示す場所にだけ用いる。

・ A案よりB案の方が優れている

・ 富士山より高い山

・ 夏より秋の方が好きだ

16 代わる(代える)・変わる(変える)・替わる(替える)・換わる(換える)

(1) 「代わる(代える)」は、別の人や物がその役をする、あるものが退いて他のものがその代わりをするなど、主としてあるものが他のものに代わってその役目を果たす場合に用いられる。

・ 投手を代える ・ 書面で挨拶に代える ・ 父に代わって働く ・ 命には代えられない ・ 身代わり ・ 肩代わり ・ 一同に代わって ・ 背に腹は代えられない ・ 石油に代わるエネルギー ・ 運転を代わる

(2) 「変わる(変える)」は、ものの状態や性質が前とは別の状態や性質になる、変化する、普通と違うなどの意味があり、主として前と違った状態になる場合に用いられる。

・ 位置が変わる ・ 心が変わる ・ 住所が変わる ・ 生まれ変わる ・ 変わり果てる ・ 時代が変わる ・ 考え方が変わる ・ 所変われば品変わる ・ 色が変わる ・ 目的を変える ・ 顔色を変える ・ 観点を変える ・ 場所を変える ・ 期日を変える ・ 名前を変える ・ 立場を変える ・ 宗旨を変える ・ 血相を変える ・ 態度を変える ・ 予定を変える ・ 調子を変える ・ 目先を変える ・ 方針を変える

(3) 「替わる(替える)」は、前の物事をやめて別の物事をする、あるものが別のものや新しいものに替わるなどの意味があり、主として前のものをやめて別の新しいものにする場合に用いられる。

・ 年度替わり ・ 月替わり ・ 日替わり ・ 商売が替わる ・ 入れ替わる ・ 立ち替わる ・ 夏服に替わる ・ 切り替わる ・ 池の水を替える ・ 組み替える ・ 積み替える ・ 付け替える ・ 切り替える ・ 繰り替える ・ 振り替える ・ 宿替え ・ 替え歌 ・ 替え玉 ・ 替え地

(4) 「換わる(換える)」は、ある物を相手に渡して別のものを受け取る、AとBを交換する、取り換えるなどの意味があり、主としてAとBを交換する場合に用いられる。

・ 金に換わる ・ 名義が換わる ・ 配置が換わる ・ 言葉を換えれば ・ 人質と引き換えに ・ 置き換える ・ 借り換える ・ 入れ換える

(5) 幾つかの書き方があるもの

ア 「書きかえる」

・ Aの名義をBの名義にする場合など「書き換える」

・ 文章の形や体裁をかえる場合など「書き替える」

イ 「取りかえる」

・ 人が持っている物と自分が持っている物とを交換する場合など「取り換える」

・ 傷んだ部品を新しい部品に取りかえる場合など「取り替える」

ただし、交換することでもあるから「取り換える」という書き方もあるとされる。

ウ 「入れかえる」

・ 「交換」する点に重きをおけば、「入れ換える」

・ 「前の物をやめて新しい物にする」「前の物をやめて別の物にする」点に重きをおけば、「入れ替える」

エ 「乗りかえ」

急行から各駅停車に乗りかえるのは、今までの乗り方を別の乗り方にかえるから「乗り換える」となり、自動車から新幹線に乗りかえるのは、前の乗り物をやめて別の乗り物にするから「乗り替える」となるが、はっきりした使い分けは困難で、普通は「乗り換える」でよいと思われるとされている。

17 漢数字について

公用文を左横書きとする場合の数字の用い方は、次のようになっている。

(1) 原則

1・2・3…10などのアラビア数字(一般に「算用数字」といわれる。)を用いる。

(2) 次の場合には、算用数字でなく、漢数字(一・二・三…十・百・千・万・億など)を用いる。

ア 「ひとつ・ふたつ・みっつ…」など、数を数える「つ」を含む名詞の場合

○ 「一つ・二つ・三つ…」

× 「1つ・2つ・3つ…」

イ 概数を示す場合

「二、三人」 ×「2、3人」

「四、五日」 ×「4、5日」

「五、六十日」 ×「5、60日」

「数十日」 ×「数10日」

「二十数年」 ×「20数年」

(問題点)

「ごじゅうにちあるいはこじゅうすうにち」は、どう書くか?

(ア) 「50日あるいは50数日」(算用数字強調)

(イ) 「50日あるいは五十数日」(基準に忠実)

(ウ) 「五十日あるいは五十数日」(漢数字強調)

の三つの表記方法が考えられ、「原則として算用数字、概数は漢数字」との基準からすれば(イ)が正しいことになるが、横書きのメリットは算用数字を用いることができるということにあるので、算用数字と併記し、かつ、誤読されるおそれがない場合には、算用数字を用い、(ア)でよいとされている。

18 聞く・聴く

「聞く」と「聴く」は、一般に、対象となっているものに対する「きく」人の態度、積極性の有無によって書き分けられている。

(1) 「聞く」は、自然にきこえてくる音声を受動的に「感じ取る」というニュアンスがあり、能動的に「自らきこうと思ってきく」という積極性はない。

・ 物音を聞く ・ 見るもの聞くもの ・ 話を聞く ・ 評判を聞く ・ 聞き流す ・ 聞きにくい ・ 聞く耳を持たない ・ 道を聞く ・ 聞いた覚えがある ・ 聞き違える

(2) 「聴く」は、自らきく気になって、身を入れてきくという積極的なニュアンスがある。

・ 事情を聴く ・ 名曲を聴く ・ 講義を聴く ・ 住民の声を聴く ・ 考えを聴く

(3) どちらを用いたらよいか判断に迷うときは、一般用語の「聞く」にするか、又は平仮名で「きく」としてもよいと思われるとされている。

19 寄付・寄附

公用文においては、「寄附」とし、「寄付」とはしない。

常用漢字表において、「附(フ)」の用例として「附属、寄附」が挙げられている。また、文部省用字用語例においては、「附」の備考欄に「附則、附属、附帯、附置、寄附」が挙げられている。

○ 「寄附」

× 「寄付」

20 下さい・ください

(1) 「下さい」は、相手にある物を「請い求める」ことを丁寧に言うとき、すなわち、「下さい」という語自体に「物を求める」という実質的な意味がある動詞として使用するときに用いられる。

・ 資料を下さい

・ 図面を下さい

・ お菓子を下さい

・ お手紙を下さい

(2) 「ください」は、相手にある物を「請い求める」動詞としての意味が薄れて、補助動詞として使用する場合に用いられる。通常は、「~してください」という形で、相手に動作を依頼する場合に用いられる。

・ 教えてください

・ お急ぎください

・ 御出席ください

21 句点(。)の打ち方(語句を列記する場合)

法令の条文、報告書、往復文書などで語句を列記する場合における句点の打ち方は、次による。

(1) その語句が名詞形で終わるときには、原則として句点(。)は打たない。ただし、名詞形で終わる字句の後にただし書その他の文章が続くときには、名詞形の後にも句点を打つ。

(後に文章が続かない場合 ― 句点(。)を打たない。)

・ 助成対象者は、次に掲げる者とする。

(1) 本市に住所を有する年齢30歳以上の者

(2) 本市に10年以上住所を有する法人

(3) ……

(後に文章が続く場合 ― 句点(。)を打つ。)

・ 助成対象者は、次に掲げる者とする。

(1) 本市に住所を有する年齢30歳以上の者。ただし、事業の趣旨に照らし特に必要と認められる場合には、30歳未満の者を対象者とすることができるものとする。

(2) 本市に10年以上住所を有する法人。権利能力のない社団及び財団は、法人に準じるものとする。

(3) ……

(2) 語句が「こと」や「とき」で終わるときには、句点(。)を打つ。

・ 助成対象者は、次に掲げる要件を満たす者とする。

(1) 個人の場合には、本市に住所を有する30歳以上の者であること。

(2) 法人の場合には、本市に10年以上住所を有すること。

(3) ……

・ 次に掲げる要件に該当するときは、助成の対象とすることができる。

(1) 個人については、本市に住所を有し、かつ、30歳以上であるとき。

(2) 法人については、本市に10年以上住所を有しているとき。

(3) ……

(3) 語句が「もの」で終わるときには、句点(。)を打たない。

・ 助成対象者は、次に掲げる要件を満たす者とする。

(1) 本市に住所を有する者で年齢30歳以上であるもの

(2) 法人であって本市に10年以上住所を有するもの

(3) ……

(登録の拒否)

第6条 市長は、登録を受けようとする認可地縁団体印鑑が次の各号のいずれかに該当するときは、当該印鑑を登録しないものとする。

(1) ゴム印その他の印鑑で変形しやすいもの

(2) 印影の大きさが1辺の長さ8ミリメートルの正方形に収まるもの又は1辺の長さ30ミリメートルの正方形に収まらないもの

(3) 印影を鮮明に表しにくいもの

(4) 前3号に掲げるもののほか、登録を受けようとする認可地縁団体印鑑として適当でないもの

ただし、「もの」で終わっても、その後に文章が続くときは、「もの」の後に句点(。)を打つのは、(1)の場合と同様である。

22 御・ご

「御」及び「ご」は、ともに、それだけでは独立して使われず、他の語の前に付いて、その意味を強めたり、調子を整えたり、ある意味を添えたりする語(接頭語)である。

新聞、放送など報道関係では、「ご」の後に漢字が続いても、仮名が続いても、いずれの場合にも平仮名の「ご」を用いているが、公用文においては、次のように使い分けることになっている(「公用文における漢字使用等について」の別紙1(2)ウ)。

(1) 漢字の「御」は、これが付く語(これに続く語)を漢字で書く場合に用いる。

・ 御理解 × ご理解

・ 御協力 × ご協力

・ 御尽力 × ご尽力

・ 御指導 × ご指導

・ 御案内 × ご案内

・ 御清栄 × ご清栄

(2) 平仮名の「ご」は、これが付く語(これに続く語)を平仮名で書く場合に用いる。

・ ごべんたつ

(注) 「鞭撻」は、ともに常用漢字表にない字であるから、「べんたつ」、「ごべんたつ」となる。

(3) 「こぞんじ」はどう書くか?

「ご存じ」、「ご存知」、「御存じ」、「御存知」が考えられるが、公用文においては「御存じ」とする。

常用漢字表の「知」の音訓欄には「ジ」という読みはなく、文部省用字用語例では「御存じ」とされており、公用文ではこれに従うものである。

○ 「御存じ」・「御存じのとおり」・「御存じのように」

× 「ご存じ」、「ご存知」、「御存知」

23 毎・ごと

(1) 「毎」は、名詞に付く接頭語であり、「そのたびごとの」、「それぞれの」などの意味を表す。

・ 毎朝 ・毎週 ・毎日曜日 ・毎試合

(2) 「ごと」は、名詞や動詞の連体形につく接尾語であり、「…のたびに」、「どの…もみな」などの意味を表す。「…ごとに」の形で用いられることが多い。

常用漢字表では、「毎」は、「マイ」としか読まず、「ごと」とは読まないので、接尾語の「ごと」を「毎」と書くのは不適切であり、必ず平仮名書きで「ごと」としなければならない。

・ 日ごとに ×日毎に

・ 一雨ごとに ×一雨毎に

・ 会うごとに ×会う毎に

・ 見るごとに ×見る毎に

・ …するごとに ×…する毎に

24 歳・才

(1) 年齢を表す場合の「さい」は、「歳」が正しく、「才」は、「歳」の便宜的な代用、俗用として用いられる語である。したがって、文章の下書きをする場合や講義を速記する場合など、表に出てこない場合はともかく、正式な公用文において年齢を表す場合には、必ず「歳」と書かなければならない。

○「20歳」

×「20才」

(2) また、歳入、歳出、歳月など、本来「歳」を用いるべき語については、「才」を使用してはならない。

× 才入 × 才出 × 才月

25 最小限・最少限

「最大」の対語は「最小」であり、「最大限」の対語は「最小限」であるから、公文書では「最小限」とすべきであって、「最少限」とすべきではない。

○「最小限」

×「最少限」

なお、「最小」は、ものの大きさの大小に関して、最も小さいこと、一番小さいことの意味で用いられ、「最少」は、数や量の多少に関して、最も少ないこと、一番少ないことの意味で用いられる。「最少限」とするのは適当でないが、「最少」という語を用いることはできるのは当然である。

26 更に・さらに

(1) 動詞・形容詞・形容動詞を修飾し、その状態・程度を詳しく定める副詞として用いるときは、「更に」とする。

・ その問題については、更に検討する(「もう一度」、「重ねて」の意味)。

・ 雨が更に激しく降ってきた(「ますます」、「いよいよ」の意味)。

・ 思い残すことは更にない(「決して」、「全く」の意味)。

(2) 接続詞として用いるときは、「さらに」とする。

接続詞としての用例には、①一つの文章が終わり、行を改めて、その最初に持ってくる場合、②文が一旦は切れるが、前の文と後の文とをつなぐ場合及び③文章の途中で用いる場合がある。

(一つの文章が終わり、行を改めて、その最初に持ってくる場合)

・ 以上のように本市の発展のため、公共施設の整備について今後とも最善の努力をする必要がある。

さらに、環境保全という面では、……

(文が一旦は切れるが、前の文と後の文をつなぐ場合)

・ 公用文を作成するに当たっては、事務を円滑にするとともに住民の信頼を確保するため、まず、その書式をできる限り統一する必要がある。さらに、用字、用語の面においてもできる限り国等で定まった公の基準に準拠する必要がある。

(文章の途中で用いる場合)

・ 文部省用字用語例においては、「附」の備考欄に「附則、附属、附帯、附置、寄附」が掲げられ、さらに、内閣法制局部内資料では……

27 趣旨・主旨

(1) 「趣旨」は、物事を行ったり、書いたり、話したりする意図、目的、理由のこと。

・ 委員会の設立の趣旨

・ 条文の趣旨に反する

・ 趣旨不明

・ 立法趣旨

(2) 「主旨」は、文章や考え方の中心となる内容のこと。「要旨」とほぼ同様と考えてよい。

・ 論文の主旨

・ 文章の主旨

(3) 例えば、

「女性の社会進出の促進」を目的として、「平成○年度以後、行政上の必要から、市に諮問機関を設置する場合には、諮問事項の性質その他合理的な理由がある場合を除き、可能な限り、その委員のうち半数は、女性とする」ということを骨子とする要綱を制定し、そのために必要となる種々の措置を規定したと仮定した場合、端的にいえば、

ア この要綱の制定の「趣旨」は、「女性の社会進出を図る」ということであり、

イ この要綱の「主旨」は、「女性の社会進出を図るため、原則として、市に設置する諮問機関の委員の半数は、女性とする」ということである。

28 その他・その他の

(1) 「Aその他B」はAとBが、「A、Bその他C」はAとBとCがそれぞれ対等、並列の関係にあることを示す。

・ 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行政庁の処分と公権力の行使に当たる行為とは対等)

・ 賃金、給料その他これらに準ずる収入(賃金と給料とこれらに準ずる収入とは対等)

(2) 「Aその他のB」はAがBに、「A、Bその他のC」はAやBがCに含まれること、すなわち「その他の」の前にあるものが「その他の」の後にあるものに包含され、後にあるものの一部分(主なものの例示)であることを示す。

・ 書記長、書記その他の職員(書記長と書記は、職員の一部)

・ 行政庁の裁決、決定その他の処分(裁決と決定は、行政庁の処分の一部)

(3) 「その他」と「その他の」の意義は、以上のとおりであるから、例えば、

ア 「書記長、書記その他規則(又は別紙)で定める職員」という場合には、書記長及び書記と規則(又は別紙)で定める職員とは対等の関係にあるから、規則(又は別紙)においては書記長、書記以外の職員について定めればよいことになるが、

イ 「書記長、書記その他の規則(又は別紙)で定める職員」という場合には、書記長と書記は、規則(又は別紙)で定める職員の例示であるから、規則(又は別紙)においては、書記長と書記をも含めて定めなければならないことになる。

この点で両者に具体的な差異が生じるわけである。

(4) なお、

ア 名詞形の後に続く「その他」や「その他の」の前には、読点は打たない。

○ 賃金、給料その他これらに準ずる収入

× 賃金、給料その他これらに準ずる収入

○ 書記長、書記その他の常勤の職員

× 書記長、書記その他の常勤の職員

イ 動詞形などの後に続く「その他」や「その他の」の前には、読点を打つ。

○ 賃金、給料等を支給し、その他これに準ずる事務を行う

× 賃金、給料等を支給しその他これに準ずる事務を行う

29 但し・ただし

公用文においては「ただし」、「ただし書」と書く。

「但(ただし)」は、常用漢字表に掲げられており、例として「但し」、「但し書き」が挙げられているが、「公用文における漢字使用等について」の別紙1(2)オにおいて、接続詞として「ただし」を用いる場合に仮名で書くとされている。

○ 「ただし」・「ただし書」

× 「但し」・「但し書き」・「但書」

なお、「ただし書」については、「送り仮名の付け方」本文通則7で慣用に従って送り仮名「き」を付けないとされている。

○ 「ただし書」

× 「ただし書き」

30 …達(たち)

常用漢字表には「達」の読みは、「タツ」しか掲げられておらず、これを「たち」と読むことはできない。

したがって、公用文では、「達」を「私達(わたくしたち)」、「君達(きみたち)」、「学生達(がくせいたち)」などのように「たち」として用いるのは適当でない。

ただし、例外的に、常用漢字表の付表で「友達(ともだち)」の用例だけは認められている。

○ 「友達」

× 「私達」、「君達」、「学生達」など「友達」以外の「達(たち)」

31 的確・適確・適格

(1) 通常の公用文においては、「的確」と書くのが適当である。

「的確」は、的を外れず、確かで、間違いのないことをいうのに対し、「適確」は、適正で最もよく当てはまっていることをいい、主として法令用語として用いられるが、国語審議会(昭和36年3月第42回総会)では、一般用語としては「的確」だけでよいとされ、また、日本新聞協会の「用字用語集」でも、「適確」は「的確」に統一するとされており、通常の文書においては「的確」を用いるのが一般的であるとされている。

○「的確」

×「適確」

・ 的確に判断する

・ 的確に対処する

・ 的確な表現をする

・ 的確な対応策を検討する

(2) なお、「適格」は、「定められた資格にかなっていること」を意味し、その意味するところは「的確」及び「適確」とは異なっているので注意する。

・ 適格者

・ 適格性

・ 適格審査

・ 原告適格

・ 被告適格

32 手続き・手続

公用文においては、「手続」とし、「手続き」とはしない。

○ 「手続」

× 「手続き」

「法令における漢字使用等について」の2(2)複合の語アただし書において、送り仮名を省く語の例として「手続」が挙げられており、「公用文における漢字使用等について」の別紙2(1)においても「手続」が挙げられている。

33 時・とき・場合

(1) 「時」は、時点、時間、時刻が強調される場合に用いられる。すなわち、端的に言えば、「何かがあった(何かをした)その時点(瞬間)」に、という気持ちを表したい場合に「時」が用いられるわけである。

・ 人生には、いい時もあれば悪い時もある。

・ 別れの時

・ 何人も、実行の時に適法であった行為………については、刑事上の責任を問はれない(憲法39条前段の一部)。

(注) 上記条文は、ある行為をするときには適法であったものを、その後にできた法律によって処罰することはできないという「事後法の禁止」を定めたもので、人権保障の観点から、ある行為をするその時点までに当該行為を処罰する法律がない以上、いかなる意味においても、これを処罰することはできないという趣旨であり、「ある行為をするその時点」が特に重要な意味を持つので、「実行の時」としたものである。

・ 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する(民法1029条1項)。

(2) 「とき」は、「何かがあったら(何かをしたら)、そのときには」という仮定的な条件を表す場合に用いられる。

・ 出席できないときは、連絡する。

・ 問題が生じたときは、審議会の意見を聴いた上で解決方法を決定する。

(3) 「場合」は、①「とき」と同じく改定的な条件を表す場合及び②既に規定(想定)された事例(事項)を引用して包括的条件を表す場合に用いられる。

ア 仮定的な条件を表す用例

「出席できない場合には、連絡する。」

イ 既に規定(想定)された事例(事項)を引用する包括的条件を表す用例

「前項の場合には、市長は………するものとする。」

画像 「前項」において規定(想定)された事例(事項)を全体的に(包括的に)引用して、「その場合には」という仮定的な条件を示している。

(4) 「とき」と「場合」の使い分けは?

ア 原則

「とき」と「場合」は、同じような意味で使われており、その使い分けには特別な基準があるわけではなく、前後の文章との関係で語感によって使い分けられている。

イ 例外

仮定的な条件が重なる場合は、大きい条件に「場合」、小さい条件に「とき」を用いる。

「……する(……の)場合において、……する(……の)ときは、」のパターン

・ 再度、会議を開催した場合において、結論が出ないときは、委員長に結論を一任する。

× 再度、会議を開催したときにおいて、結論が出ない場合は、委員長に結論を一任する。

・ 係員は、システムが故障した場合において、30分以内に復旧するめどがつかないときは、直ちに関係機関に報告しなければならない。

× 係員は、システムが故障したときにおいて、30分以内に復旧するめどがつかない場合は、直ちに関係機関に報告しなければならない。

34 と共に・とともに

公用文においては、動詞などに付く場合も、名詞などに付く場合も、全て「とともに」とするのが適当であり、「と共に」を用いるのは不適切であるとされている。

○ 「とともに」

× 「と共に」

(動詞などに付く場合)

・ 説明するとともに意見を聴く。

・ 古い制度を改善するとともに新しいシステムの導入を検討する。

(名詞などに付く場合)

・ 代理人とともに出頭する。

・ 家族とともに旅行する。

・ 資料とともに原稿を提出する。

35 並・並み

(1) 「特に良くも悪くもないこと」、「中くらい」、「普通の程度であること」などを表す名詞として用いる場合には、「並」とし、送り仮名を付けない。

・ 並の人間ではない

・ 並以上の知識

・ 並外れた能力

(2) 名詞の後について「同じものが幾つも並んでいること」や「その種のものと同程度であること」などを表す接尾語として用いる場合には、「並み」とし、送り仮名を付ける。

・ 軒並み

・ 人並み

・ 世間並み

36 ○人・○名

公用文においては、同じ意味のものを違った言葉で言い表すことのないよう統一して用いることとされ、その例として、「○人」と「○名」は、「○人」に統一するものとされている。

37 パーセント・%

通常の公用文では、「パーセント」と書く。

「%」は記号であって、文字ではないから、通常の公用文の中では用いず、表などの中で用いるのが普通である。

38 配付・配布

公用文では、「配布」とし、「配付」は用いないのが適当である。

○「配布」

×「配付」

「配付」は、特定の人々(個々の人々、一人一人)に配ることを意味し、「配布」は、広く行き渡るように一般に配ることを意味するものとして使い分けられてきたが、漢字使用の簡易化のため、同じ意味で異なった表記の語は統一するとの方針の下に、「法令における漢字使用等について」において「配付・配布」は、特別な場合以外は「配布」を用いるとされ、法令と公用文における標記の一本性を確保するという観点から「配付」の使用は避けるのが望ましいとされている。また、日本新聞協会及び共同通信社のそれぞれの「用字用語集」においても「配付」は「配布」とするとされている。

39 話・話し

(1) 名詞として用いるときは、「話」とし、「し」を送らない。

・ 話をする

・ 話を聞く

(2) 動詞として用いるときは、「話し」(動詞「話す」の連用形)とし、「し」を送る。

・ お話しします

・ 話し合う

40 日付・…年…月…日付け

(1) 「日付」は、この形で用いることについて慣用が固定していると認められており、送り仮名を付けない(「送り仮名の付け方」本文通則7(2)、「法令における漢字使用等について」の2(2)複合の語イ参照)。

○「日付」

×「日付け」

(2) しかし、「平成7年4月1日付け文書により…」というように「…付け」の形をとるときは、送り仮名の付け方の原則に従い、送り仮名「け」を付ける。

○「平成…年…月…日付け」

×「平成…年…月…日付」

(3) なお、「(条件)付(採用)」などのように、「……付……」という場合には、「き」を送らない。

41 一人一人・一人ひとり

公用文では、「一人一人」と書くのが適当である。

○「一人一人」

×「一人ひとり」

漢字が続くことによる堅苦しさを避けるためなどの理由から、新聞では「一人ひとり」が使用されているが、文部省用字用語例では「一人一人」が挙げられている。

42 …外・…他・…ほか

公用文においては「ほか」と書く。

「外(ほか)」・「他(ほか)」は、常用漢字表に掲げられており、例として「その外」・「○○の他」などが挙げられているが、「公用文における漢字使用等について」の別紙1(2)キにおいては、「…を除くほか」のように用いるときは仮名で書くものとされており、「法令における漢字使用等について」においても、常用漢字表にあっても「ほか」と仮名で書くものとされている。

43 欲しい・ほしい

(1) 「自分のものにしたい」、「手に入れたい」などの意味を表す場合は、「欲しい」(形容詞)を使う。

・ 金が欲しい

・ 立派な家が欲しい

(2) 「……してもらいたい」という意味を表す場合は、「……してほしい」(補助形容詞)と平仮名で書く。「……して欲しい」とは書かない。

○「……してほしい」

×「……して欲しい」

・ もっと努力してほしい

・ 資料を提出してほしい

・ 協力してほしい

44 程・ほど

(1) 「程」は、名詞であって、物事、時間、空間、身分の程度を表す場合に用いる。すなわち、「ほど」という語に、実質的に「度合い」、「程度」などの意味がある場合に、「程」を用いるわけである。

(物事の程度、限度を表す名詞の場合)

・ 程が知れない

・ 真偽の程

・ 実力の程

・ 人を馬鹿にするにも程がある

・ 危険の程を考える

・ 冗談にも程がある

(時間・空間の程度を表す名詞の場合)

・ 程なく

・ 湖から程近い所に

・ 休む程もなく

(身分の程度を表す名詞の場合)

・ 身の程を知る

(2) (1)の場合以外は、全て平仮名の「ほど」を用いる。すなわち、公用文においては、多くの場合は平仮名の「ほど」を用いることになる。

平仮名の「ほど」には、形式名詞の場合と副助詞の場合とがある。

ア 形式名詞としての「ほど」は、「……のほど」の形をとり、こと、次第、様子などを表す。

・ 御厚意のほど感謝します

・ 覚悟のほどを見せる

・ 御自愛のほどをお祈り申し上げます

イ 副助詞の「ほど」は、次の用に用いる。

(ア) 数量・時間を表す語について程度を示す。

・ 体重が2キロほど増えた

・ 1週間ほど家を空けた

(イ) 「これ」、「それ」、「あれ」、「どれ」などの語について、甚だしい程度であることを示す。

・ これほど ・ それほど ・ あれほど ・ どれほど

(ウ) 程度を比較する基準を示す。

・ イギリスの夏は、日本の夏ほど暑くない

・ 行うことは、言うほど容易ではない

・ 驚くほど速い

(エ) 後に打ち消しの語を伴って、それが最高の程度であることを示す。

・ 親ほど有り難いものはない

・ 戦争ほど恐ろしいものはない

(オ) 活用語を受けて、その事柄の変化に比例して結果に表れる意を示す。

・ 研究すればするほど奥の深いことが分かった

45 本市・当市

「本市」と「当市」に関し、特に使い分けについての定めはないが、多くが次の見解によっているので、原則としてこれによる。すなわち、

(1) 「本市」は、市内を対象とするときに用いる。

したがって、市民への通知文書などでは市内が対象だから「本市」を用いる。

(2) 「当市」は、市外を対象とするときに用いる。

したがって、他市への照会、回答文書などでは市外が対象だから「当市」を用いる。

46 又・また

公用文においては、「また」と平仮名で書く。

「又(また)」は、常用漢字表に挙げられているが、「公用文における漢字使用等について」の別紙1(2)オにおいて仮名で書くものとされているほか、「法令における漢字使用等について」においても、常用漢字表にはあるが仮名で書くものとされている。

・ A案を検討し、また、B案も検討する。

・ …である。また、…については、…

47 又は・若しくは

(1) 「又は」も「若しくは」も、ともに前の語句と後の語句とを選択的に結び付ける接続詞である。画像「接続詞は、平仮名」という原則に対する例外の一つ

(2) 通常、二つ以上の語句を選択的に並べるときは、最後の語句の前に「又は」を入れる。画像「若しくは」ではない点に注意する。

(類型)

・ A又はB(~し、又は~する)

・ A、B又はC(~し、~し、又は~する)

・ A、B、C又はD(~し、~し、~し、又は~する)

(具体例)

・ 普通地方公共団体の議会の議員は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない(地方自治法92条1項)。

・ 普通地方公共団体は、条例で、前項の職員に対し、扶養手当、地域手当、住居手当、初任給調整手当、通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)、へき地手当(これに準ずる手当を含む。)、時間外勤務手当、宿日直手当、管理職員特別勤務手当、夜間勤務手当、休日勤務手当、管理職手当、期末手当、勤勉手当、寒冷地手当、特定任期付職員業績手当、任期付研究員業績手当、義務教育等教員特別手当、定時制通信教育手当、産業教育手当、農林漁業普及指導手当、災害派遣手当(武力攻撃災害等派遣手当を含む。)又は退職手当を支給することができる(地方自治法204条2項)。

(3) 選択的に連結される三つ以上の語句に、まとまり(分類)の上から段階(強弱)があるときは、小さな段階での接続に「若しくは」を、大きな段階での接続に「又は」を用いる。

例えば、AかBかCかという場合、これらを単純に選択的に並べるときは「A、B又はC」とすれば足りるが、「AとB」のまとまりが「C」との結び付きよりも一層強く、そのことを意識的に表そうとするときは、「AとB]のグループを「若しくは」を使ってワンセットにして「A若しくはB」とし、更にそれと「C」とを「又は」を使って結び付け、「A若しくはB又はC]とするわけである。

このことは、一つの文章で、「又は」のないところに「若しくは」が出ることはないことを意味する。逆にいえば、ある文章に「若しくは」があれば、その文章のどこかに「又は」があることになる。

(類型)

・ A若しくはB又はC(~し、若しくは~し、又は~する)

・ A、B若しくはC又はD(~し、~し、若しくは~し、又は~する)

・ A、B、C若しくはD又はE(~し、~し、~し、若しくは~し、又は~する)

(具体例)

・ 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分(行政手続法3条1項1号)

・ 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分(行政手続法3条1項2号)

・ 主宰者は、聴聞の期日において必要があると認めるときは、当事者若しくは参加人に対し質問を発し、意見の陳述若しくは証拠書類等の提出を促し、又は行政庁の職員に対し説明を求めることができる(行政手続法20条4項)。

48 年齢・年令

公用文においては、人が生まれてからその時までに経過した年数をいう場合には「年齢」と書かなければならない。「年令」の「令」は、「齢」の俗用であって、公用文で用いるのは不適当である。

○ 「年齢」

× 「年令」

49 者・物・もの

(1) 「者」は、自然人と法人とを通じ、法律上の人格を有するものを表す場合に用いる。したがって、法人格のない社団、財団は、含まない。

(2) 「物」は、人格がある者を除いた、外界の一部をなす物理的な物件、物体(有体物)を表す場合に用いる。

(3) 「もの」は、①「者」や「物」では表現できない抽象的なものを表す場合、②行為の主体が自然人、法人のほかに法人格のない社団や財団を含んでいる場合や法人格のない社団や財団だけである場合、③行為の客体となっているものが有体物でない場合や有体物だけでない場合などに用いる。

なお、「もの」は、以上のほかに、関係代名詞的な用法があり、「…(である者、である事項…)で(であって)…(する)もの」という形で、先行する一定の者や事物を受けて、更にこれを限定する場合に用いられる。

・ 本市に居住する者で(であって)当該事項について知識経験を有するもの

・ 業務を執行するために必要な備品で(であって)規則で定めるもの

50 分かる・判る・解る

(1) 公用文においては、次のように、①物事の意味、内容、事情などが理解できる、②知れなかった事情が明らかになる、③世情に通じ、融通性がある、などの意味を表す場合には、「分かる」とする。

ア 物事の意味、内容、事情などが理解できる。

・ 意味が分かる

・ 講義が分かる

・ 英語が分かる

・ 上司の考えが分かる

イ 知れなかった事情が明らかになる。

・ 真相が分かる

・ 消息が分かる

・ 試験の結果が分かる

・ 居場所が分かる

・ 真犯人が分かる

ウ 世情に通じ、融通性がある。

・ 話の分かる人

・ ものの分かった人

(2) 「判る」は、どちらであるかを知ることができる、判明する、の意味があり、上記(1)イ「知れなかった事情が明らかになる」の意味と共通するところがあるので、一般に「判る(わかる)」として用いられているが、常用漢字表では「判」には「わか(る)」という読みは掲げられていないので、公用文で用いるのは不適当である。

(3) なお、「解る」も、上記(1)ア「物事の意味、内容、事情などが理解できる」の意味と共通するところがあるので、「解る(わかる)」として用いられているが、常用漢字表では「解」には「わか(る)」という読みは掲げられていないので、「判る」と同じく公用文で用いるのは不適当である。

以上、要するに、現在では「わかる」は「分かる」と書き、場合によっては平仮名で「わかる」とし、「判る」や「解る」は用いない。

○「分かる」

×「判る」

×「解る」

51 訳・わけ

(1) 「訳」は、①物事の意味・内容、②物事の筋道・道理、③原因・理由、④事情など実質的な意味を表す場合(実質名詞である場合)に用いる。

(物事の意味・内容)

・ 訳の分からない話 ・ それはどういう訳ですか

(物事の筋道・道理)

・ 訳の分かる人 ・ 親がそう言う訳がやっと分かった

(原因・理由)

・ 逃げた訳 ・ 離婚した訳 ・ 遅刻した訳 ・ そういう訳で参加しない

(事情)

・ これには深い訳がある

(2) 「わけ」は、以上のような実質的な意味が薄れて、形式的な言い回しになった場合(形式名詞である場合)に用いる。

ア 「……したわけです」、「……したというわけです」という言い方

・ やっと念願がかなったわけです

・ そこで、私がお伺いしたというわけです

イ 「……わけではない」、「……わけにはいかない」という言い方

・ あなただけを責めているわけではない

・ そういうことを言ったわけではない

・ 受け取るわけにはいかない

・ 承知するわけにはいかない

よく使われるが、公用文での使用に適さない漢字(表外漢字)

前に個別に説明した漢字のほか、次の漢字は、日常よく使われるが、常用漢字表に掲げられていないため、公用文においては使用すべきでない。

1 …に於いて(…において)

2 其の(その)

3 …迄(…まで)

4 或いは(あるいは)

5 云う(いう)

6 頁(ページ)

7 綴る(つづる)

8 尚・猶(なお)

9 揃う(そろう)

10 也(なり)

11 逢う・遇う(あう)

12 嬉しい(うれしい)

13 只(ただ)

14 註(ちゅう)

15 殆ど(ほとんど)

16 遥か(はるか)

17 詫びる(わびる)

18 吾(われ)

19 斡旋(あっせん)

(「旋」は常用漢字だが、単語の一部だけを仮名に改める方法は、できるだけ避けるため、「あっせん」と表記する。)

20 煙草(たばこ)

(「煙草」と書いて「たばこ」と読むのはあて字であって、正式な読みではないが、公用文での使用に適さないという点で以上の漢字と共通するので、ここに挙げた。)

見出し符号(細別符号)

公用文の作成に当たり、項目を細別する場合には、次の順序で符号を用いる(「公用文作成の要領」第3「書き方について」の5の〈注〉4、「司法行政文書の書き方」、「市町村公文例規程(案)」(日本加除出版)など)。

1 左横書きの場合

画像

(例)〔○は、1字空白を表す。〕

第1○…

1○…

○(1)○…

○ア○…

○(ア)○…

○a○…

○(a)○…

○(b)○…

b○…

(イ)○…

イ○…

(2)○…

2○…

第2○…

注意

1 見出し符号(細別符号)の次には「.」、「,」、「、」などを打たず、1字分空白とする。

○ 1 … × 1.…

○ (1) … × (1),…

○ ア … × ア、…

2 細別する項目が多くない場合には、「第1」を省いて「1」から用いる。往復文書等の「下記」などにおいては、「1」から用いるのが例である。

2 縦書きの場合

画像

注意

見出し符号(細別符号)の次に「.」、「,」、「、」などを打たず、1字分空白とすること、及び細別する項目が多くない場合には、「第一」を省いて「一」から用いてよいことは、左横書きの場合と同様である。

公文書作成の手引

平成30年6月8日 種別なし

(平成30年6月8日施行)